多摩川の自然のニュース:2013年10月〜12月

新しい日付順に配列してあります。水色は多摩川水系桃色は他の川等緑は会議等です。
画像は重いので質を落としてあります。古い画像は半年ぐらいで削除します。
この記事の筆者はすべて柴田隆行です。

2013年1〜3月
2013年4〜6月
2013年7月〜9月
2014年1月〜3月

12月30日 程久保川合流点から新井橋までの浅川右岸
 今夏程久保川多摩川合流点右岸から遠望したら、程久保川浅川合流点右岸の河原で草刈りをした跡が見えたので気になっていた。用事のついでに程久保川合流点に確認しに行った。そこにあるのはなんと花壇だった。河原から丸石を運び上げてずらりと並べてあるかなり大がかりな花壇だが、不法耕作と思える。幸い植えられたのは河原植物などではなく園芸種のようだ。ついでに礫河原で河原植物の有無を調べ、浅川の高水敷を新井橋まで歩いた。冬ながら今日は風がないので暖かい。草地に続く踏み跡に残念ながら河原植物は見あたらなかった。
 アオサギ、カルガモ、イカルチドリ、モズ、シジュウカラ、ヒヨドリ、ツグミ。

12月25日 万年橋から和田橋までの多摩川右岸
 青梅市立美術館で、今年シリアで政府軍に殺されたフォトジャーナリスト山本美香さんの写真展を見たあと、万年橋から上流約500mの右岸にある礫河原で河原植物調査をした。BBQ跡にカワラニガナが3株あり、1株でもあれば周囲に必ずもう少しあることが経験からわかっているので注意深く探すと、あるある。1つ1つ数えて600を越えた辺りから一面のカワラニガナ群落が広がり、10単位、最後は100単位で数え、合計約4100株ぐらいあった。一段下がった水辺には223株、少し上流に26株。万年橋上流左岸の小さな群落の種子供給源はこの右岸の礫河原だと思われる。この季節は種子を付けたコセンダングサがびっしりと生えており、容赦なくズボンや靴紐について歩くのに苦労する。上流端から対岸の礫河原が良く見える。これは臨川庭園の脇から入る礫河原で、ここからぐるっと和田橋経由で辿り着いたが、増水できれいに洗われているためか礫河原に植物はほとんど生育していない。水衝防止ブロックの壊れたものが点在しておりちょっと芸術的。ここからふたたび青梅まで歩いた。よく歩いた一日だった。
 カワウ、ノスリ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、ガビチョウ。

12月22日 永田地区
 カワラノギク保全活動の一環として、種子採取を行った。ここに開花株が約5万あるが、大きな増水があると一挙に消滅しかねない。そこで、明治医学農学部でここの種子を少し採取して冷蔵保存しておく。カワラノギクの冠毛の付き方がかわいい。6月に確認したカワラニガナの群落が健在。今回は46株あった。
 カワウ、ダイサギ、アオサギ、コジュケイ、セグロセキレイ、ツグミ、ホオジロ、スズメ。

12月15日 多摩大橋から日野橋までの多摩川右岸
 定例自然観察会。穏やかな一日。八高線鉄橋から谷地川合流点までの多摩川右岸の河川敷で大規模な河道修正が計画されており、明日からその区間の樹木伐採が始まるとの看板が立っている。いまは穏やかな雰囲気で、ラジコン飛行場内で数人ゴルフをして楽しんでいた。
 谷地川が多摩川の河川区域に入った所にある田圃の畦を通って多摩川堤防へ出て、のり面を降りて草むらを抜ける踏み跡をたどっていったら、なんと、谷地川沿いについている踏み跡が未だに消えずに残っていることを知る。そして、カワラケツメイの群落が新たに見つかった。さらにその下流、分岐した谷地川の流れが合流する辺りは、参加した会員が思わず「奥入瀬川みたいだ」と言った、とても良い雰囲気が残っている。小魚がたくさん跳ねているのも興味深い。
 ふたたび堤防に登ると、ノスリが遠くの木にとまっているのが見えた。このノスリはその後カラスに追い回されて場所を移動したが、その結果、中央線鉄橋下流でも日野橋付近でも上空を飛んでいるのを間近に見ることができた。
 中央線に古い列車が通るとかで、いわゆる「撮り鉄」が堤防上に行列している。河原で昼食をとりながらわれわれもその列車の通過を待ったが、ちょっと古いタイプの団体列車が通っただけ、少なくともわれわれにとっては期待はずれだった。その下流から水辺を歩く。土丹が霜で崩れ靴底に重くくっつく。カワラニガナが1株。堤防のり面では色とりどりの葉をつけたカラマツソウがきれいだった。
 カワウ、ダイサギ、アオサギ、イカルチドリ、イソシギ、トビ、ノスリ、コジュケイ、カワセミ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、ジョウビタキ、ツグミ、エナガ、ホオジロ、カシラダカ、アオジ、カワラヒワ、スズメ、オナガ、ハシブトガラス。

12月9日 多摩川原橋から是政橋までの多摩川左岸
 多摩川原橋から稲城大橋までの高水敷に工事用搬入路が造られており、この間数q堤防から水辺へいっさい近づけない。かつては途中で数ヶ所横断できる口が作られていたが、昨今はずいぶん横柄だなと思う。その稲城大橋付近で工事のためにカワラサイコを移植すると連絡があったが、地図を持ってこなかったのでどこだか確認できなかった。稲城大橋から是政橋までは府中市のせせらぎ公園や菜の花畑公園やらが延々と続く。低水護岸に近い所にカワラサイコの群落が2箇所あった。1箇所は百を越える群落。詳細は今年の初夏に倉本氏がカウント済み。ここの低水敷はかつて広大な礫河原だったが、いまは礫に細粒土が被り一面草地になっている。
 ユリカモメが数羽、カラスにいじめられていた。

12月3日 谷地川合流点付近の多摩川右岸
 八高線鉄橋から谷地川合流点付近までの多摩川右岸河川敷に生えている樹木の伐採・抜根が行われるので、カワラケツメイ群落保護のための現地協議を行った。この区域では樹木伐採が目的ではなく、左岸寄りの流路を河川区域中央に寄せる大規模な工事を行うための下準備。この大規模河川改修も遠からず行われる予定。

12月1日 立日橋から南武線鉄橋までの多摩川左岸
 暖かい。遠くに純白の富士山が望める。右岸で数ヶ所護岸工事が始まっているが、この区間の左岸での工事はなく、落ち着いた河原歩きができた。ただし、堤防天端は高速サイクリング車が次々と疾駆し、本格的マラソンランナーやジョギングを楽しむ人などで犇めき、ただの歩行者はのんびりと歩けない。幸い、高水敷に踏み跡がずっと続いているので、そこを歩けば問題ない。ところどころ猛烈なコセンダングサの種子をうまくかわせば。
 石田大橋下流の高水敷の路で大きなカワラサイコが1株、関戸橋下流2qほどの草むらにも2株。この地域にカワラサイコはまだあることは今夏Kさんが調査して下さったのでわかっているが、いまは他の草が茂りコセンダングサの大群落がびっしりと続いているので追跡する気が起きない。関戸橋下流読売新聞社前の高水敷にラジコン飛行場があるが(約15名)、その下流端にカワラノギクの畑があった。開花株6、ロゼット5。関戸橋上流の畑は草むらで人為なしでは成長できそうもないが、ここは砂利を掘り起こしてあるので、ロゼットがすでにあるように、若干定着しそうだ。
 府中郷土の森前の河原は、12月だというのにBBQを楽しむ家族や団体が十数組来ている。カワウの大群が雁のように上空を飛んでいく。鬼怒川や相模川では先月中旬にジョウビタキの声を聞いたが、多摩川でもわが家周辺でもこの冬まだ一度も見かけない。

11月24日 関戸橋上流両岸
 たぶん今年最後の河原植物調査。左岸に府中市民が植えているカワラノギクの畑が以前からある。最初に作ったところは洪水と雑草に覆われ消失、いまはそこから少し上流の草むらの中にある。カワラノギクが生育できる環境ではないから苗を植えているのではないかと推測される。茎が太く枝分かれも多い大株。正確にはわからないが目算で30株。近くの草原に3株。周辺はオギとコセンダングサに覆われている。
 右岸に渡り中州へ。数年前に関戸橋から双眼鏡でカワラノギクが生えているのを見たことがあるが、その後洪水で流出した。広大な中州を隈無く調べた結果、カワラニガナが426株、そしてカワラノギクが8株あった。うち4株は寝ているので9月の台風による増水で水を被りつつ耐え抜いたものと思われる。

11月12日 相模川 神澤不動尊地先
 日曜日に行くはずが悪天で中止、仕事をやりくりして念願のカワラノギクを見に相模川へ。鬼怒川と違い、わが家から1時間以内。多摩川より近いところにカワラノギクやカワラハハコの群落があるのを知らなかった。カワラノギク研究者の倉本さんから詳しい地図をいただいていたので、現地はすぐわかった。この辺は河川敷が広く、野球場あり、ラジコン飛行場あり、そしていまどきモトクロス練習場(1枚目の写真)もある。
 カワラノギクは、周囲より一段高く多きめの礫を敷き詰めたかなり広い一画に生えており、いまが満開で、時期のせいもあるのか多摩川や鬼怒川のものよりも花の色が濃い。永田地区の初期のように株が大きく花も立派だ。雑草が生えていないから、除草に相当力を入れているのか、造成してからまだ日が浅いのかはわからない。(永田地区A工区で礫が露出していたのは3年ぐらいで、その後はイタドリやヨモギに覆われてしまった。)保護区(播種して育てている一画)の外にも広がっているのが好ましい。
 礫河原をすこし下流に向かうと大きめの礫河原にカワラノギクの群落がある。ここもロープで囲まれた跡があるので自生ではなく播種したものと思われるが、先述のところよりもずっと自然的だ。が、大水が出たら流出すると思われる。そこからさらに下流に行くと、カワラハハコの自生地に着く。鬼怒川のカワラハハコは丈が30〜50pあったが、ここのは10〜20pの小柄で高山植物のようできれいだ。鬼怒川の河原植物保護区は高水敷にあるが、ここは礫が敷き詰められた低水敷だという違いが影響していると思う。周囲の様子からして鬼怒川の場合は人為で保護しないとクズやオギなどで覆われそうだが、ここはその心配がまずないけれど増水ですべて流出する危険はある。
 ジョウビタキの鳴き声がここでも聞かれた。多摩川ではもう20年以上見かけないウサギの溜糞があった。

11月9日 鬼怒川 氏家地先
 カワラノギクを見に鬼怒川へ。往復7時間。遠い!! 氏家大橋上流左岸にある保護地区へ。花期は終わっていた。数年前に一度来たことがあるが、その時もシナダレスズメガヤ対策が大変だと言っていた。いまはきれいに除去されているが、全体にかなり花壇っぽい。細めのカワラノギクがたくさん一本立ちしているが、気になる点はロゼットがほとんどないことと柵の外に花もロゼットもないこと。ただし、柵内の上流半分は礫がやや大きく自然な感じでロゼットも見られた。カワラヨモギが雑草のように生えている。さらに上流に行くと草地にカワラハハコもあちこちに生えている。多摩川でカワラヨモギがあるのはたった3箇所、カワラハハコはたったの1株に比べると信じられない光景。カワラノギクに関して言えば、多摩川のほうが自然な生え方できれいだと思う。
 上流にもう1つ柵で囲まれた保護地区がありカワラハハコの大群落がある。そこからさらに上流へ向かうと河川工事現場があり、そのブロック製作ヤードと東北新幹線鉄橋との間に保護地区がある。ここはカワラノギクとカワラハハコとカワラヨモギが混在しており雰囲気も自然な感じで良い。その隣にカワラノギクだけ保護されている区域があり、柵の外にカワラハハコがたくさん生えており違和感を覚えた。この区域ではカワラノギク以外は河原植物でも排除するのだろうか。
 倉本さんの話ではさらに上流にもカワラノギクがあるそうだが、天候が悪化しているので、ここまでとした。ジョウビタキの鳴き声をこの秋初めて聞いた。

11月5日 小作堰下流中州から永田橋までの多摩川
 河原植物の調査。昨日行う予定だったが雨だったので仕事をやりくりして快晴のもと本日実施。
 予想通りの猛烈な藪こぎで、中州入口からカワラノギク群落地まで約1時間かかった。途中で数回諦めようかと思ったが、頑張って良かった。二箇所に分かれて合計約1000株のカワラノギクが咲いていた。
 帰りに羽村堰上流両岸にあるカワラノギクを見てきた。左岸は大別して二箇所にあり約200株、右岸は、水辺に5株、うち1株は数年前の大水で流された群落の跡地にあった。これは生き残りではなく左岸から種子が飛んできたものではないだろうか。堤防付近に7株、羽村植物友の会の保護地には約130株が開花していた。
 来たついでに初夏に藪がひどくて入れなかった通称K13へ。ノイバラに服をひっかけながらも突破。ここのカワラノギクは昨年絶滅したが、カワラヨモギが約800株弱生えている。
 永田橋下流左岸の護岸工事のためのブロック製作ヤードが右岸に造られつつある。広大な広場になって見通しが良いが、工事終了後にあきる野市がグラウンドにしたいと言い出しかねないので厳重な注意が必要だ。(むかしそういう計画があった。)
 ダイサギ、アオサギ、キジ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、シジュウカラ、ホオジロ、アオジ、スズメ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

11月1日 友田地先の多摩川
 カワラノギクの調査。ここの自生地では、開花株59、ミックス(ロゼット付き開花株)1、ロゼット47を確認。
 カワラニガナは花期が長い(4月末から11月初)ことは知っているが、今年は花をつけた株がまだたくさんある。
 台風26号のときの増水でできた水流の跡が礫河原にくっきりと残っていた。

10月29日 八高線鉄橋左岸、睦橋下流右岸、拝島橋右岸
 現在河川工事が着工している箇所のうち、上記箇所で河原植物保護のための現地確認を京浜河川事務所職員ならびに工事担当者と行った。
 カワラニガナやカワラヨモギが生えている箇所は工事作業ヤード外だった。八高線鉄橋上流の中州は右岸の護岸工事のため右岸寄りが削られる予定。

2013年10月27日 永田地区 カワラノギク・プロジェクト
 開花調査。先日の台風による増水で現地へは土手からも橋からも途中で小川を渡らなければ入れない。
 A工区のうち秋に除草した一画でカワラノギクが33株、A工区全体では開花個体201とのこと(明治大学調査)。
 参加者42名が行ったB〜E工区は、オギその他草木がかなり茂っているが水辺は一面のカワラノギク。ロゼットは芝生状態。20m四方の区画28を調査。区画の中心点から半径2m内の株数を数えた。開花個体976、ロゼット7763、ミックス88で、開花個体総数は1064株。これを統計処理すると約5万株、おおよそ一昨年の水準だそうだ。
 永田橋周辺にも開花個体はあり、目算で19株。
 橋より下流の柳山公園前の低水護岸工事が始まるため、そのブロック製作ヤードが右岸に造られた。多摩川では稀少種のカワラケツメイは保護される計画。
 ダイサギ、アオサギ、トビ、セグロセキレイ、モズなど。

2013年10月20日 稲城大橋上流から大丸用水堰までの多摩川右岸
 自然観察会。強雨にプラスして多摩川では強風も。水量はまだとくに多いというほどではないが、これから増水しそうだ。改めて水流を見ると、多摩川はけっこう流下斜度がきついと思える。野菊の季節だが、強風雨で傘を支えるのがやっとなのでおちおち周囲を見る余裕がない。それでも水辺ではカイツブリ、ダイサギ、コサギ、アオサギ、そしてアマツバメかショウドウツバメが上空を舞う。京浜河川事務所多摩川出張所前のグラウンドの周囲にカワラサイコ。他は特記すべきものはない。

2013年10月13日 万願寺地先から日野橋までの多摩川右岸
 ようやく湿度が少し下がった快晴。スポーツの秋、ラジコン飛行機が舞う秋。堤防のり面の在来植生調査区間の雑草が生い茂り個人では除草できないので河川管理者に除草を要望中。今年はとくにコセンダングサが目立つ。高水敷ではカワラヨモギが開花中。多摩川ではほぼ絶滅寸前だが、レッドデータブックには載っていない。カワラニガナは種子をたくさんつけているが、周囲はコセンダングサが繁茂し、周囲はいずれ立入困難になるだろう。礫河原が先日の増水で泥水を被ったようだが、カワラニガナがまだ花を咲かせていた。
 季節を問わないガビチョウの合唱。
 日野橋まで歩いたが、この辺は数年前に連続3年護岸工事をしたため特記すべき植生等が見あたらない。