多摩川の自然のニュース:2012年7月〜9月

新しい日付順に配列してあります。水色は多摩川水系桃色は他の川等緑は会議等です。
画像は重いので質を落としてあります。古い画像は半年ぐらいで削除します。
この記事の筆者はすべて柴田隆行です。

2012年1〜3月
【2012年4〜6月
【2012年10〜12月

9月30日 カワラノギクプロジェクト 秋の除草
 永田橋上流右岸、A工区再造成地の一部、カワラノギクの開花株が100ほど確認できる地区に重点を絞り除草し、種子が自然撒布されて自生できる環境にすることを目指した。京浜河川事務所と福生市、明治大学、市民の合同作業態として、今回は32名が参加。他に通称「ツルハシ隊」が少し上流のイタドリ繁茂地の再生を行った。台風が迫るなか、日光と適度の風で快適な作業で済んだ。堤防のり面には、ツリガネニンジン、ワレモコウ、ナンテンハギ、カラマツソウ、ツルボなど秋の花が真っ盛り。曼珠沙華も今年はちょうど真っ盛り。

9月29日 多摩川源流景観シンポジウム 小菅村
 多摩川源流の小菅村は、今年の3月、「小菅村源流景観計画」をまとめた。昨年1月に計画策定を決め、中村文明源流研究所長や源流大学などで事務的なとりまとめをしつつ、おもに地元住民が地区ごとに協議を重ねて策定した、具体性のある計画。これを記念してのシンポジウムが、まだ木の香りがする新しい中学校体育館で開かれた。
小菅村源流景観協議会委員長、小菅村村長等の挨拶のあと、計画の概要説明、川崎の鈴木眞智子さんによる熱い、源流との連携挨拶、そして中村良夫東京工業大学名誉教授による記念講演。最後にシンポジウム。地元住民を中心に100名ほどの参加者が源流のこれからのあり方について希望を抱きつつ真剣に考えた貴重な時間だった。

9月12日 小宮地先の多摩川右岸
 谷地川合流点から多摩大橋まで炎天下を歩いた。
 本堤と水辺をつなぐ径はこの季節は2本。出入口を見つけられなければ背丈を越える猛烈な藪こぎを強いられる。逆にこの径はよく踏まれているのでありがたい。再造成地はオギとツルヨシとオオブタクサが猛烈に繁茂し水辺は遠い。それらがまだ蔓延っていないところは、永田橋下流の再造成地同様絨毯のようにびっしりとツルマメが覆っている。それらを踏み越えて上流へ向かうと土丹に出る。ここから先はほとんど草が生えていない。
 カワラケツメイの小群落は健在だが、ここからいっこうに広がらないのが残念。約2000株が開花しているのに。
 それにしても、これだけ日照りが続いているのに大小の池が残っていて小魚も棲んでいる。
 下水処理水の出口付近から堤防に戻るルートは完全に藪の中に消えている。釣り堀の裏を通る径はしっかりしており、そこを抜けて無事堤防へ戻る。

8月13日 永田橋右岸上下流 猛暑
 猛暑が続き雨が降らないなかでカワラノギクがどうなっているか気になったので見に行った。橋の下流は遠目は涼しげだが、その場に立つとかなり草が生い茂って暑い。ツルマメが絨毯のように繁茂している。カワラケツメイがどこにあったか忘れたためか猛暑で解けたか、見つからなかった。
 橋の上流はツルヨシが猛烈に成長し、藪こぎをしないと上流に進めない。ヒメガマが茶色のソーセージを数個つけていた。藪を突破してもツルヨシの繁茂がすさまじく、かろうじて残っている作業用路を進む。右はツルヨシ、左はオギで、ともに2m以上ある。カワラノギクの開花株がもっとも多く見られたBC工区境辺りもツルヨシが覆い、ロゼットは日照りで焼けていた。水辺の方はまだ相当数のロゼットが見られるが、この辺は大水が出たらすべて流出する危険地帯だ。
 草の林のようなB工区を抜けて、ようやくA工区についてびっくり。6月の除草の成果が美事にあらわれ、大きな草がほとんどなく、カワラノギクが元気に成長していた。
 帰路は土手に出て風に吹かれながら炎天下を歩いた。ウグイスとホオジロの声しか聞かれなかった。

8月5日 万願寺地先の多摩川右岸
 相変わらずの猛暑だが、夏の去るのがつくづく惜しいと鳴くツクツクホウシが鳴き始め、秋の気配もする。炎天下のグラウンドでは野球や、将来のサッカーなでしこJPを担う?女の子たちのサッカー練習が行われていた。木陰ではラジコン飛行機愛好者が10名ほど控えて飛ばす準備をしていた。ほかには人影が見られない。とにかく暑い。
 あまりの猛暑の連続のためか、不法ゴルフ場の芝もまっ赤に焼けている。(除草剤散布でないことを願う。)カワラナデシコも今夏は絶望的な感じだ。
 堤防のり面の在来植生保護地区もクズやチガヤなどが繁茂し、スズサイコは1株しか見られなかった。
 合流点から浅川に沿って歩いた。浅川は堤防から遠く、その間はクズが繁茂して近付けない。
 都立日野高校にて、来年1月13日に開催予定の、第四回多摩川市民学会の打ち合わせ会があった。今回は生き物を中心テーマとするので、おもしろそうだ。

7月21〜22日 御嶽山
 夏の水源合宿。木曜日までの猛暑はどこへ?というその後の涼しい日々。恒例の水源合宿は半袖では肌寒い、良く言えば涼しくさわやかな気候だった。八王子では雨が降ったらしいが、御嶽山は霧に包まれてはいたが雨には降られなかった。昨今の高尾山の異常な人気の余波か、都会から気軽に来れるこちらの信仰の山にも外国人や山ガールを含め大勢のハイカーが訪れるようになった。いまは夏休みで小学生の団体が目立った。
 まずは御嶽駅前の御岳渓谷で多摩川を見てから、バスとケーブルで山上へ。今回はのんびり行程なので、道の両側や山の斜面などこれほどじっくり・ゆっくり見たことがないというペースで過ごした。おかげでいろいろな発見があった。宿泊所の登奈利荘では、地元で採れる山菜や蒟蒻、蕎麦などの料理をたくさんいただき、宿のご主人の片柳さんから、山上に暮らす26軒の御師の人たちの生活や神道・神主修行のお話、独自の平等主義、その他、興味深いお話をいろいろとうかがった。
 その後夜遅くまで参加者同士のおしゃべりののち、午前4時には早朝観察へ。ホオジロやウグイス、メジロ、ヒヨドリなどのほかガビチョウと、残念ながら下界でも聴ける野鳥が多く、山の鳥の声は聴かれなかったが、朝食後神社へ登るとオオルリが2羽囀っているのが聞こえた。
 昨日の夜の観察では、ムササビの声を数度聞いたが、姿は見られなかった。御嶽神社では個性的な狛犬がいろいろとあっておもしろかった。宝物殿へは今回寄らなかったが、かつて八王子市郷土資料館に勤めていたときこの宝物殿に収められている鉄製の俵(賽銭箱)を背負子の載せて担いでこの山を上り下りしたことがあった。1610(慶長15)年に狭山の柏原で造られたもので、長さがたしか1m弱、重さは40sぐらいだったと記憶する。都の重要美術品。なつかしい思い出の一つ。
 御岳渓谷でニイニイゼミが鳴いていた。今年初聞き。
 野鳥は前述のように種類も数も少ないのが残念。キジバト、キツツキSPドラミング、イワツバメ、キセキレイ、ヒヨドリ、ミソサザイ、ウグイス、オオルリ、メジロ、ホオジロ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

7月15日 万願寺地先の多摩川右岸
 猛暑にも拘わらず野球少年やサッカー少年たちは元気にグラウンドを走り回っている。堤防小段で毎日のようにドラムの練習をしている青年も元気だ。そしてテントを張ってライフル銃を並べているサバイバルゲーマーも元気だ。疲れているのは高齢のラジコン飛行機愛好者やゴルファーで、姿を見ない。
 堤防のり面や河原は目下カワラサイコとヤブカンゾウが花盛り。正確に言うと、カワラサイコはどこにでも生えているが、ヤブカンゾウは平坦な所で、斜めになっている堤防のり面にはノカンゾウが咲いている。在来植生保護のため除草期間調整をしてもらっている区間では、今年は早めに一回目の除草をしてもらったおかげで、スズサイコが6株花と実をつけていた。
 きれいに草刈りがされている不法ゴルフ場を抜けて上流へ向かうとコオニユリの群落があるが、まだつぼみだけで咲いていない。カワラサイコのお花畑を通り、水辺に出る。カワラケツメイの群落が、種子の落下のせいか、去年よりも一段下にあり、目算で860株。去年は100株ぐらいに減少したので、今年は大水で流されないかぎり、しばらく絶滅は免れそうで安心した。
 さらに上流に向かい、かつてカワラノギクがあった一帯の草原化を見つつ少し上流にカワラケツメイの300株ほどの密生地があった。水辺の株と比べると葉の付き方が少し違っていて興味深い。この一帯では、カワラケツメイは堰近くにもあるが、猛暑で疲れたので今日はパスしてしまった。
 ツバメ、セッカ、ホオジロ、ガビチョウの声がよく聞かれた。