多摩川の自然のニュース:2012年4月〜6月

新しい日付順に配列してあります。水色は多摩川水系桃色は他の川等緑は会議等です。
画像は重いので質を落としてあります。古い画像は半年ぐらいで削除します。
この記事の筆者はすべて柴田隆行です。

2012年7〜9月
2012年1〜3月
【2011年7〜12月

6月24日 永田橋上下流の多摩川右岸
 カワラノギク/プロジェクトの作業日。永田橋上流から下流にかけての新造成地でロゼットと実生の数を数えた。先日の台風の影響で水量が多い。
 A工区は除草対象地区だが、どこから除草しようか戸惑うほど草が繁茂している。B工区の下流部で成長するニセアカシアについて、東京農工大学の星野さんの指導で巻き枯らし実験をした。台風の影響で枝が折れたニセアカシアがあちこちで見られた。
 C工区はカワラノギクのロゼットと実生が最も多く見られるところであり、多い所では足の踏み場がないほど実生が出ている。橋の上流は100近い実生があったが、橋より下流はロゼットが2本あっただけだった。新造成地は帰化植物や園芸植物が目立つが、カワラニガナのほか、多摩川では希少種のカワラケツメイが十数株生えていた。埋土種子の発芽だろうか。
 カワウ、カルガモ、イカルチドリ、トビ、ツバメ、オオヨシキリ、セッカ、ウグイス、ホトトギス。

6月17日 干潟館からガス橋までの多摩川右岸
 定例自然観察会「歩き・見て・考える」第3回は下流から上流へ。雨上がりの曇り空、のち時々残りの雨。その後蒸し暑い夏空となる。
 京急大師線東門前から多摩川堤防へ。水辺には良い干潟が広がり、シジミを採る人が数人。オオヨシキリがあし原で盛んに囀っている。干潟の野鳥はいない。わずかにコサギとカルガモとカワウのみ。
 堤内地の味の素の工場境に植えられた並木が揃っている。ハクウンボクの大きく白い花がまだ咲いている。堤防の草刈りが終わったばかりで、ジャコウアゲハが必死に食草のウマノスグクサを探している。少し先に河港水門がある。産業移籍に指定されている。行政の縦割が反映して、文化庁と経産省、そして川崎市の3者によって登録されている。
 六郷橋を過ぎると、次の多摩大橋まで川が大きく蛇行している。行き先のビルが近くに見えるがなかなか近づかない。六郷橋から上流の右岸には水辺まで十数軒の人家があったが、すべて撤去されて公園となり、堤内地はスーパー堤防化されている。隔世の感あり。居住者はどうなったか気になるが、河口からずっと川沿いに歩けるようになったことはありがたい。
 11時を過ぎて青空が見え始めると、急に夏日となった。蒸し暑く、日差しは強烈だ。水辺のマンションの陰で昼食をとる。
 午後は、公園、サッカー場、ゴルフ練習場、ゴルフ場、サッカー場等々と河川敷は占用されて、堤防上を歩くしかない。せっかくだから水辺も見てみようと、ゴルフ場の先から水辺へ向かったが藪が茂って川は瞥見するだけ。草いきれで暑い草原を抜けると、おそらく無断で造ったミニゴルフ場が4コースほどあった。
 最後のガス橋までは、意外と遠い。河川敷や水辺の自然が多様ならば距離は気にならないが、なにしろ単調な環境なのでなおさら疲れる。
 野鳥は種類が少なかった。カワウ、カイツブリ、コサギ、アオサギ、カルガモ。ツバメ、オオヨシキリ、セッカ、カワラヒワ、スズメ、ムクドリ、ハシブトカラス。

6月10日 青梅市友田地先の多摩川右岸
 圏央道橋下流の丸石河原の形状が少し変わった。橋のすぐ下にあった丸石河原は砂に完全に覆われてしまった。ついでながら、橋のすぐ隣で建設中だったケアセンターが完成し人の出入りが多い。景観的には良い所だが24時間圏央道を走る車のガタゴト音が私には神経を逆なでする。
 上流の河原もだいぶ草が生えた。クズが覆い始め、キササゲやネムノキの実生があちこちでたくさん育っている。河原の中央にできた溝が大水の出るたびにえぐれて、いまではすっかり水路になった。少し水量が増えたら友田の公園方面へ河原を通して歩けなくなるだろう。その分、カワラニガナの数が減った。
 カワラノギクが自生する環境もだいぶ悪くなった。今回はロゼットを51見つけた。カワラニガナと混生しており、見間違い易い。(写真5枚目で河原の偽右派中央の3株のみ)
 カワウ、ウグイス、ヒヨドリ、ムクドリだけ。野鳥はどこへ?

5月28日 万願寺地先の多摩川右岸
 強風吹き荒れる中、堤防のり面除草期間調整区間へ植生調査に行った。
 除草されたのり面に背丈の低いハタザオが遅ればせながら咲いている。コゴメバオトギリが咲き始めた。風が吹くたびにチガヤの穂が銀色に光ってきれいだ。
 調査区間にはレンリソウが目算288株、うち開花株は1つしかなかった。昨秋に除草しなかった影響で草が入り乱れレンリソウの生育には適さない環境になった。スズサイコの芽が伸びないうちに今年は早めに除草したほうが良さそうだ。
 コジュケイ、ツバメ、ウグイス、シジュウカラ、ムクドリ。
 雲行きが怪しくなり急ぎ足でモノレール駅へ。立川北駅に着いたとたん、通路の屋根など役に立たないすさまじい驟雨となった。河原にいたら全身びしょ濡れになっただろう。

5月20日 青梅万年橋から下奥多摩橋までの多摩川 晴れのち曇り
 定例自然観察会。今年度は河口から万年橋を歩き・見て・考えることを年間テーマとし、今回はその第2回目。五月の風がさわやかで気持ちがよい。
 青梅駅からまずは万年橋まで。途中、マンションの駐輪場から多摩川を眺め下ろす。ニセアカシアの花がまだ咲いている。万年橋は1995年に架け替えられたが、それまでのコンクリート・アーチ橋は、明治期以来の鉄骨アーチ橋にコンクリートをかぶせたものだという。
 花々があれこれ植えられている民家のあいだを通り、柳淵橋へ。ニセアカシアの花の香りが周囲に漂う。右岸の釜淵公園の緑陰と野草が精々しい。河原ではBBQなど楽しむグループが大勢来ている。崖を上がり民家を抜けて、ふたたび河原に出て、カジカガエルの鳴き声を聞きつつ昼食。調布橋から下奥多摩橋までは河原を歩けないので、住宅地を抜ける。下奥多摩橋下流右岸の駐車場縁の崖に真っ黄色のジャケツイバラがたくさん咲いていた。

5月12日 万願寺地先の多摩川右岸
 堤防のり面除草調整区間植生調査。五月晴れというイメージ通りの天候で、野球、サッカー、マラソン、ジョギング、バードウォッチ、ラジコン飛行機等々大勢の人で多摩川は賑わっている。そのためか、野鳥の声はあまり聞かれなかった。堤防の除草はほぼ終わっているが、所々残してあるのは何故だろうか。他方、私たちが日本在来植生保護のために除草の時期をずらしてもらっている区間では、レンリソウが開花し始めた。昨年冬に除草をしなかったので、株の発育が悪く、レンリソウは目算で325株、そのうち開花株は9だった。
 池ではキショウブが咲き、高水敷はニセアカシアが満開。ハナウドもだいぶ咲きそろって来た。いまごろ一帯が黄色く見えるほど一斉に開花するツキミソウは、除草のタイミングが悪く、川側に3輪見られただけだった。
 カルガモ、キジ、ツバメ、イワツバメ、ヒヨドリ、ウグイス、セッカ、カワラヒワ、ムクドリ、ガビチョウ。

5月6日 永田地区
 ここ数日の不順な天候で雷雨がしばしばあったためか、多摩川の水量が多い。
 永田橋から多摩川右岸に降りて、カワラノギクの実生やロゼットを見ながら上流へ。今年は実生の発芽が早いようで、すでにたくさん出ている。所により10p四方で100粒を優に越える。これが200m×25mの広さに分布しているとすると500万粒、粗密があるので平均して少し割り引いても300万粒。もっともこんなに密生していると育たないから10p四方で10粒としても30万粒。夏の日照りや大水での流出等を引くと……と考えても無駄だが、大過なければこの秋もそれなりの数の開花が見込まれる。これに対してわがA工区はすでに草丈が生い茂りカワラノギクの実生が無事に育つか心許ない。上流半分はすでに1m丈のイタドリが繁茂している。
 さて、そうこうしている内に今日も雷鳴が轟き、樹林から堤防に抜ける道が水没しているのを頑張って通過し終わる頃には傘がさせないほどの風雨で、堤防のり面の植物を見る余裕はなかった。永田橋に戻ると雨は止んで日が差してきた。
 イカルチドリ、ツバメ、イワツバメ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、オオヨシキリ、セッカ、カワラヒワ、ムクドリ、ハシブトガラス。

4月29日 万願寺地先の多摩川右岸
 4月は新年度開始で土日も勤務で、その結果2週間風邪で体調不良となり、多摩川が遠ざかってしまった。このまま一ヶ月に一度も多摩川に出なければ、多摩川が縁遠くなりすぎるので、咳をしながた多摩川へ出た。ほとんどの人が半袖姿の夏日で、日差しがまばゆい。
 堤防のり面の除草、昨秋は経費削減のためかなされていないようで、枯れ草が目立つ。在来植生保護のための除草期間調整区間でもチガヤが茂り、レンリソウやワレモコウが枯れ草の中から懸命に首を持ち上げて春の日差しを浴びようと頑張っている。アマナの株数が減りつつあるのが気になる。この辺りにあるタンポポはすべてカントウタンポポだ。
 池には釣り人が3人。妙なカメラマンが陣取っているよりはるかに良い。地元の団体がやったのか、ホテイアオイがすべて除去されている。キショウブがいくつか咲き始めた。
 ラジコン飛行場は今日も賑わい、上空を3機飛び交っている。気になるのは、下流部の不法ゴルフ場でも一人ラジコン飛行機を飛ばしている点だ。多摩川は自由使用が原則だから、多少排他的な行為でも、他に誰もいなければ、一人ぐらいラジコン飛行機を飛ばして楽しむことに私は異論を挟まないが、気になるというのは、人間は「知恵のある動物」であると同時にソクラテス・プラトンが言うように「誰でも善を望む」から、そのうちゴルフ場を整地して滑走路を善くしようとか自然を改変して自分達なりの改善努力を行い始めかねないことで、他の事例で見る限りすべてそうした行為がエスカレートして、個人の素朴な楽しみが組織的な自然破壊へと発展する。
 下水処理場の右(上流側)はかつて砂利砕石所だったが、いま土が大きく掘られて何か施設が造られている。下水処理場を拡張するのだろうか。
 アオサギ、キジ、ツバメ、ウグイス、シジュウカラ、ホオジロ、ムクドリ、ガビチョウ。