多摩川の自然のニュース:2011年7月〜12月

新しい日付順に配列してあります。水色は多摩川水系桃色は他の川等緑は会議等です。
画像は重いので質を落としてあります。古い画像は半年ぐらいで削除します。
この記事の筆者はすべて柴田隆行です。

2011年1〜3月
2011年4〜6月
2012年1〜3月

12月31日 昭和用水堰付近の多摩川右岸
 現在行われている睦橋上流左岸の護岸工事と連関させて、右岸の河川改修が計画されており、そこから出る土砂を、秋の台風時の増水により大きく削られた、昭和用水堰下流部に敷いて堰を補強するという案がある。かつてこの堰下は多様な形状の河原になっておりいろいろな生物が棲息していたので、そこを埋めるのには抵抗があるが、増水後大幅に形状が変わったということで見に行った。たしかにとくに土丹部がグランドキャニオンのように大きく掘られて見応えがあっておもしろいが、治水担当者から見ればたしかに危険でなんらかの措置を講じる必要があると考えるのは無理がないと思えた。なお、堰そのものは東京都の管理構造物であり、この修復工事が年明けから始まる予定。
 カイツブリ、カワウ、ダイサギ、オオバン多、マガモ、ミコアイサ♀3、セグロセキレイ、ハシボソガラス、ハシブトガラス。

12月28日 谷地川から八高線までの多摩川右岸
 本年春までに行われた水辺の造成地を視察。切り倒したニセアカシア等をチップにして撒いた一帯はオギ原になった。礫を並べた所は礫が大きすぎてすきまに土が入るかまったく入らないかのどちらかでいずれにせよ河原植物は生えそうにない。多摩大橋近くの池の周辺はアレチウリの猛威に覆われている。
 多摩大橋と八高線の間は、チップを敷き詰めた区画は不毛地帯でニセアカシアは生えないが「生態系保持空間」にはまずなりそうにない。しかし今は草木が生えないこの一帯のチップはいずれ腐って富栄養化状態になることは間違いない。隣接する礫を敷き詰めた所にカワラケツメイが数株見られた。ここにかつてあったラジコン飛行機場がいま小規模ながら復活して数機とまっていた。
 カワウ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、コガモ、セグロカモメ、トビ、キジ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、ツグミ、ホオジロ、カシラダカ、スズメ、ハシブトガラス。

12月23日 永田地区
 多摩川カワラノギクプロジェクト。種子採取。増水等による万一の消失に備え永田地区C〜E工区にて1株から1頭の種子を1人20〜30、11人で採取した。採取した種子は自然環境アカデミーの冷蔵庫に保管される。A工区の現状を視察したのち、「カワラノギクの保全・復元をめざす多摩川市民の会」の総会を開き、今年の活動の反省、入会資格の一部変更、幹事選任、来年の大まかな活動計画などを決めた。
 カワウ、アオサギ、ダイサギ、セグロカモメ、トビ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、シジュウカラ、エナガ、カワラヒワ、ハシブトガラス。

12月18日 青梅万年橋周辺と青梅街道
 定例自然観察会。青梅駅横の観光案内所で地図をもらい、まずは青梅街道を右へ、と向かう予定が、最初に入った路地の脇に古い様式の民家が見えたので近づくと、そのさらに脇から「昭和の猫町 にゃにゃまがり」なる猫横町が予想外に長く続き、路地のあちこちに猫のオブジェや絵が並び十分楽しませてもらった。ようやく街道に出て左右に古い造りの商店を見つつ、材木問屋として栄えた稲葉家へ。立派なシオジの大黒柱や梁、欅のタンス、障子等々を見学、裏庭の寒桜は終わりかけていたが、改築中の土蔵も特別見せていただいた。次に青梅の地名の由来となった梅のある金剛寺に寄り、男井戸女井戸で珍しいマツバランを観察、そしてようやく河原へ。9月の台風による増水で河原はすっかり変わったが、砂に埋まったカワラニガナが16株顔を出していた。柳淵橋下流左岸に流路が走って河原は中州となった。久しぶりに板垣退助像を見たり釜の淵を上から覗いたりして郷土博物館へ。そして青梅のレトロ商店街と猫神社などの寺社を見学し、最後に黒猫(chat noir)という清純なウエイトレスがいるレトロな喫茶店で歓談して終了。町中猫のオブジェに満ちていたが、生きた猫は一匹もいなかった。
 ちなみに、毎年12月の観察会で来年度の年間テーマを決めるが、来年度は原点に戻って多摩川の現状調査を行うことにした。
 カワウ、ダイサギ、コサギ、トビ、ノスリ、キジバト、カワセミ、コゲラ、キセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、ウグイス、シジュウカラ、エナガ、スズメ、ハシブトガラス。

12月13日 二ヶ領用水宿河原堰右岸
 多摩川流域委員会機能空間検討委員会がせせらぎ館で行われたついでに、周辺を観察。堰付近から多摩川を見ると豊富な水が海のように見える。魚道改築のための調査が行われていた。ぼんやり辺りを見ていると、向こうからこちらへ歩みよってくる人がいる。目が悪いのでそばまで来ないとわからなかったが、多摩川の河川環境改善でその名を欠かすことのできないかつての河川環境課長の山田さんだった。いまは河川環境管理財団に勤めているとか。お元気そうでなにより。会議では、谷地川合流点付近のニセアカシア林伐採等を含む改修工事後のモニタリング結果報告と、睦橋周辺の改修工事の説明があり、質疑が行われた。後者に関しては礫の大きさで流路がどう変化するか決まるので、試掘で礫層を調べないと何とも言えないということで、詳細は次回となった。

11月27日 小作堰から羽村堰までの左岸
 カワラノギクPJ。小作堰下の群落調査をすべくメジャー等用意万端だったが、数日前に予告なしに用水への通水工事がなされ中州に立ち入れない。代わりに羽村堰上流左岸の河原植物の調査を行い、たくさんのカワラニガナと、約200株のカワラノギク開花個体、ほぼ同数のロゼットを確認した。

11月15日 河辺地先から小作堰下までの左岸 晴のち曇り
 先週に続き外来植生調査。センダングサの種子が無数にズボンに着くので、今日はレインコートのズボンを履き万善の体制で挑んだが、歩道がしっかりついていてセンダングサにいっさい触れずに周囲一帯を回遊することができた。カワラニガナがわずかに残されていた。小さな池ができていた。
 それ以外には特記すべきことはないが、小作堰下流でカワラノギクの群落が9月の増水にもかかわらず残っていた。
 カイツブリ、カワウ、ダイサギ、コサギ、アオサギ。トビ、アカゲラ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ジョウビタキ、ハシボソガラス、ハシブトガラス。

11月8日 小作堰から万年橋までの多摩川
 小作堰下の中州のうち、下流側の大きな中州は、用水が埋まって渡渉なしで入れる。右岸の堤防沿いで住宅建設が進んでいる。次第に多摩川の視野が狭まっている。川の水は比較的多く白濁しているのは、9月の増水以来上流の山から土砂が流出しているせいだろう。友田周辺の河原もだいぶ変わった。長淵の造成地は削られず、水辺に砂と小砂利がだいぶ溜まって段差が少なくなった。左岸の崖上住宅の下が崩れてブルーシートが貼ってあるが、先年の増水で崩れたので大規模な護岸工事が行われた。しかし、崖の崩壊は護岸の有無とは関係ないことがこれで明らかになったと思う。下奥多摩橋下流右岸の礫河原が少し延びた。下奥多摩橋から調布橋までの左岸は、水辺を歩けるようになった。ただし、先端はいずれも道のない崖をよじる必要がある。
 ジョウビタキが鳴いていた。ようやく秋ないしは初冬の気配。今日は立冬。
 カイツブリ、カワウ、ゴイサギ、ダイサギ、コサギ、アオサギ、マガモ、カルガモ。トビ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ジョウビタキ、ハシブトガラス。

10月30日 多摩川永田地区
 多摩川カワラノギクプロジェクト。開花株とロゼットの調査。市民・行政・研究者の三者によるプロジェクトで、今回の参加は40名。9つの班に分かれて、永田橋上流右岸の「永田地区」に生えるカワラノギクの分布調査を、25mメッシュの中心半径2m内を測定。事前調査で開花株あると分かっている36の調査メッシュの合計は、開花株が500強、ロゼットが2500強で、統計学的処理による推定は開花株が約26000、ロゼットが約126000となった。
 9月の台風による増水で流失が心配されたが、見た目としては水辺を中心にかなり広く分布している。ただし、この増水は他の植物も含めて根こそぎ流す力はなく、逆に砂を大量に置いていったため、全体として草が増えたという印象が強く、来年はいっそう植物が繁茂してカワラノギクには成育しにくくなるのではないかと懸念される。

10月16日 中原街道小杉御殿から多摩川 晴、猛暑
 
定例自然観察会。今年度の年間テーマは街道。中原街道は、東海道が整備される以前、江戸と東海・関西とを短距離で結ぶ(平塚から)主要街道であったため、徳川二大将軍秀忠が屋敷を構えて管理した。「小杉御殿」と言われるゆえんである。
 小杉御殿町と呼ばれる一帯には、中原街道、「カギ」の道、御蔵稲荷(かつてはすぐ裏に多摩川が流れていたとか)、小泉次太夫の陣屋跡、西明寺、小杉学舎跡、庚申塔と大師道、小杉十字路(中原街道と府中街道の交差点。明治期には繁華街となってロンドン・パリと呼ばれたとか)、二ヶ領用水、等々数多くの史跡が残されている。等々力緑地に入れば、各種スポーツ施設のほか、川崎市民ミュージアム、緑地、釣り堀等々がある。私の子ども時代には、この一帯は広大な水郷地帯だった。
 そして、すぐそこに多摩川。多摩川のこの地には「等々力水辺の楽校」に指定された中洲がある。先月の台風による増水、昨日の大雨等により、多摩川の水辺は予想以上にきれいだった。

9月3日 日野橋から浅川合流点付近までの多摩川右岸 曇り、一時豪雨、台風によりつねに強風
 定例自然観察会。9月は毎年「鳴く虫を聞く会」で、16時に多摩モノレール「甲州街道」駅集合。ただし、今回の参加者は全員で4名。リーダーだけだが、この台風による暴風雨のなか参加するのはまあこのメンバーぐらいだろう。
 甲州街道が多摩川を渡るのが日野橋。数年前まで多摩川は大増水すると橋脚すれすれまで水が来て極めて危険だったが、今回見ると、橋脚がかなり補強されているし、桁下にまだ余裕があるので、水量が多いとしてもまだ危険な水量ではなさそうだ。ただし、永田のカワラノギクなどは全滅だろう。
 堤防までだいぶ距離があるので、この天気でも堤防を散策する人がいても驚かないが、高水敷で子どもだけが3人遊んでいるのには呆れた。
 雨が降っていないので、万願寺地先でまだたくさん咲き残っているカワラナデシコを見たりツリガネニンジンを見たりして暗くなるのを待つ。暗くなってマツムシやスズムシが鳴き始める寸前に突然暴風雨状態で林に逃げ込む。でもまあ台風の影響とわかっており、予想通り15分ぐらいでおさまって、月も出て来た。
 気温がたかいせいか、スズムシもマツムシもずいぶん高音だ。でもまだ天然物が健在で安心した。ほかに、エンマコオロギ、ハラオカメコオロギ、ツヅレサセコオロギ、カンタン、シバスズ、クマスズ、ウマオイ、そしてアオマツムシ。ハグロトンボがまだ飛んでいた。
 カワウ、ダイサギ、アオサギ、ゴイサギ、チョウゲンボウ、カワセミ。

7月30〜31日 多摩川水源合宿・笠取山
 新潟・福島で豪雨があり天候不安定で心配したが、列車が笹子トンネルを抜けると青空が見えた。塩山からタクシーで登山口の作場平へ。奥多摩方面からのマイカー参加者と合流し、11時20分発。左右に苔がきれいな湿地を見つつ林の中を15分で本谷と分かれ登り道へ。今回は一休坂を登った。ミズナラの林でコマドリがよく囀っている。沢に着けば笠取小屋までもう一息だが、人工整備された道は辛い。小屋で久しぶりに田邉静さんと再開。お母さまもお元気とのことでなにより。
 13時30分着で時間がたっぷりあるのでお花畑を散策したり歓談したりして過ごす。鹿が増えてマルバタケブキ以外はほとんど花がない。鹿が2頭逃げていくのが見えた。夕食後、暗くなってからも懐中電灯で闇を照らすと鹿が来ているのが見られる。
 星が一時期たくさん見えたが、雷光もときどきあり、深夜雷鳴が遠く聞こえた。
 午前4時半に起床して早朝観察をする予定だったが、4時ちょっと前に地震があって結局全員4時に起床。大菩薩嶺が大きく聳え、そのはるか上空に雲と見間違えるように富士山の頭が見えた。朝食を済ませた頃からすっかり雲に覆われた。
 6時30分出発水干の下の水場に寄り、水干からさらに裏道を経て笠取山山頂へ。最後のピーク(一番手前の山梨県が称する山頂)で雨になり、急坂を慎重に下り、小屋に戻ったら激しい雨。
 行動食をとり荷物をまとめ10時に出発、雨で山道が沢のようになっているなかを藪沢コースを下り、11時30分に作場平着。この辺は小さな沢は濁っておらず、林道に出ると夏の日差し。
 植物は、シモツケソウ、シモツケ、オトギリソウ、ヤマオダマキ、キオン、コウリンカ、バイケイソウ、コキンレイカ、サワギク、カラマツソウ、セキヤノアキチョウジ、ノリウツギ、ツルアジサイ等々だが、極めて少ない。
 低い所では、コエゾゼミ、エゾハルゼミの鳴き声、コムラサキ等々。
 野鳥は、ホトトギス、アカゲラ、イワツバメ、ビンズイ、ミソサザイ、コマドリ、ルリビタキ、アカハラ、ウグイス、メボソムシクイ、キクイタダキ、コガラ、ヒガラ、キバシリ、メジロ、ウソ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

7月26日 万願寺地先の多摩川
 堤防のり面除草調整区内のスズサイコ開花株4。カワラサイコが土手でも河川敷でもあちこちにたくさん咲いている。カワラナデシコはやや日焼け。カワラヨモギは数が減少。カワラケツメイは水辺に95株、堰付近で222株、いずれも先日の台風による増水で水を被ったが生き残った。
 池に釣り人1人。カメラマンがいなくなって平和が戻った感じ。ゴルファーもラジコン飛行機もいない。野鳥の声とキリギリスの演奏が一帯に響いている。
 キリギリスがあちこちで鳴いている。林の中はハグロトンボが群舞。ニイニイゼミの声。
 アオサギ、ツバメ、ヒヨドリ、セッカ、ウグイス、ホオジロ、ハシブトガラス、ガビチョウなど。

7月23日 多摩川永田地区
 多摩川カワラノギク・プロジェクトの定例作業。今回は、A工区再造成地最下流区画にて除草。行政・研究者・市民など35名参加。猛暑の除草かと覚悟していたが、台風6号接近以来涼風が吹き、比較的楽な除草作業だった。季節遅れのホトトギスの連呼とガビチョウ、セッカ、ウグイスの囀り。無事に予定の除草を終えた。 

7月22日 京浜河川事務所多摩出張所から大丸用水堰までの多摩川右岸
 二ヶ領用水堰上河原堰改築に伴う護岸工事と中州撤去について、京浜河川事務所から説明を受けた。堰上流左岸の護岸工事は2期に分けて行い、今期は下流側半分を行う。回転堰の効果を上げるため堰上流中州を撤去するが、堰本体の残り部分を改修するために流れを変える必要から一番下流側の中州を今期に撤去し、上流側の中州は次期に撤去する方針とのこと。工事をする以上は自然への影響を小さくするため工事期間をできるだけ短くするよう要望した。
 ついでの工事説明として、睦橋上流左岸の護岸工事と関連させて右岸の掘削を予定していたが、そこで生じる礫の量が膨大なのでその処理について再検討する必要があり、今期は護岸工事(2期分の半分)のみとするという話もあった。
 来たついでに多摩川を視察。多摩出張所の前の河川敷に野球場があるが、その脇の小さな広場には昔からカワラサイコの群落がある。現在もグラウンドと併せて除草されているが、この空き地は選手の練習場として踏み荒らされるのではないかと気になった。台風6号の影響で降った雨で多摩川は増水。しかし、造成礫河原の形を変えるほどの増水がなく残念。改修された大丸用水堰を落下する流水に迫力があった。

7月5日 福生中央公園から永田地区までの多摩川 猛暑
 汗で濡れたあとで乾いたポロシャツに塩の地図が……。
 本業で定例自然観察会を欠席したが、当日の参加者から、カワラハハコを見つけたとの報を得て見に行った。
 カワラノギクプロジェクトの実生調査も風邪で欠席したため、ついでに現地を見に行った。
 途中で通る福生市柳山公園の欅が見るも無惨。
 柳山公園の一角にカンゾウが3種類植えてある花壇があるが、永田橋上流右岸で見る天然物の美しさとは比較にならない。
 カワラハハコはとても大きな株だったが、残念ながらこれは雌雄異株のようで花は咲きそうにない。
 ビロードモウズイカが今年はあちこちで繁茂している。
 永田地区では、管理用道路の除草が行われていた。
 イカルチドリ、トビ、ツバメ、イワツバメ、ヒヨドリ、ウグイス、オオヨシキリ、ホオジロ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス、ガビチョウ。