多摩川の自然のニュース:2014年7月〜9月

新しい日付順に配列してあります。水色は多摩川水系桃色は他の川等緑は会議等です。
画像は重いので質を落としてあります。古い画像は半年ぐらいで削除します。
この記事の筆者はすべて柴田隆行です。

2014年10月〜12月
2014年4月〜6月

2014年1月〜3月

9月28日 永田橋右岸上下流
 カワラノギク・プロジェクト。秋の除草。A工区の中央にかなり前からあるカワラノギクの群落の周囲を除草し、裸地を造り、小石を浮かして冬に種子が石に引っかかって定着しやすいようにする。
 この地区で、今秋開花しそうな株は約40、ロゼットが約80。
 京浜河川事務所、福生市、明治大学、そしてカワラノギクの保全・再生を目ざす多摩川市民の会による協働体だが、他に市民の力では手に負えない重作業は通称「ツルハシ隊」と私たちが仮称しているプロにお願いしている。その作業場の中央、A工区の最下流区には開花個体が13あった。
 帰路、永田橋周辺でカワラノギクを探したが見つけられなかった。盗人萩のような種子が体中に付く。その群落を迂回して下流へ。カワラケツメイが約500株。昨年秋に左岸の護岸工事をする際に保護してもらったが、いま群落が見られるのはそれよりも下流に分布する。
 永田橋下流右岸の堤防のり面は在来の野草が多く見られる。いまはナンテンハギが満開。堤防天端の除草したものをそののり面や天端に放置してあり、ヒロハノカワラサイコの生育を阻害している。

9月21日 多摩大橋から八高線鉄橋までの多摩川右岸
 多摩大橋付近のニセアカシア等の林の中にカワラケツメイとカワラサイコがあるとの情報をもとに前回調査したが見つけられず、京浜河川事務所に詳しい情報をうかがい再挑戦。地図を頼りにヤッケを頭から被って藪に突入。笹藪と無数の蜘蛛の巣を突っ切って進むが「伐採区」らしき所がなく、川が近づいた気配がしたので逆方向に転換。しばらくでニセアカシアの小木に赤テープを巻いた調査区に出る。ここは先週少しかすめた所だが、改めて必死にあちこち歩き回った挙げ句にようやくカワラケツメイを1株発見。1株でもあれば近くにさらにと調べると、500株ぐらいの群生地を発見。わかってみると、近くに20〜50株ぐらいの小群落が林の中に点在している。カワラサイコは雑草が繁茂しているこの時期にはさすがに見つけられなかった。
 先週歩いたニセアカシアの巻き枯らし実験地では、今日はサバイバルゲーマーが約15名ほど機関銃を持って走り回っていた。
 復活したラジコン飛行基地を2つ抜けて八高線鉄橋手前で水路を渡り、造成地を下流方向に調査。礫が積み上げられている所はまだ特記すべきものはない。そこから低くなっている所は藪が濃くて入れない。
 鉄橋に戻って土丹経由で下流の礫河原へ。カワラケツメイを1株発見。ならばと付近を眺めると、オオっと一人で声を上げてしまった。目算1000株ほどのカワラケツメイの群生地があった。さらに付近を調べたが、そこ以外にはなかった。昨年カワラニガナがあった礫河原は増水で流されたらしいが、新たに29株カワラニガナを見つけた。
 ダイサギ、セグロセキレイ、モズ、スズメ。

9月15日 多摩大橋右岸周辺と水路の下流端付近
 多摩大橋上流のニセアカシア林にカワラサイコとカワラケツメイがあるとの情報を京浜河川事務所から受けて確認しに行ったが、見つからなかった。ニセアカシアの剥き枯らし実験地では下草が刈り払われているが、他は猛烈な藪。いずれにせよ河原植物が生える環境ではない。藪が茂る前の春にはあったかもしれないので、再度京浜河川事務所に問い合わせをしたい。
 八高線鉄橋から下流に新たに水路が造られているが、多摩大橋から1q弱の所に水路をまたぐ仮橋が架けられている。(橋を渡ってもその先は藪)その少し下流の水路近くと、トラック折り返し場、そしてそこからさらに50m下流の道ばたにカワラケツメイの大きな株がそれぞれ1つあった。1株ずつしかないので今年発芽したものだろう。株が大きいので来年は周囲に種子が散布されて拡がると期待される。キクイモが花盛り。かつての釣り堀は残っているが、そこから河原に出る径は消えた。
 大橋から下流に向けて多摩川の礫河原が拡がったが、いまのところ河原植物はない。ツルヨシが根を縦横に張っているので、来年は礫が覆い尽くされるだろう。この礫河原は下水処理水の水路で行き止まりとなる。
 ダイサギ、アオサギ、ツバメ、コジュケイ、セグロセキレイ、スズメ。
多摩大橋直上流のニセアカシア林は現在藪の中。巻き枯らし実験地は入れるが、河原植物が生える環境ではない。水辺からは入れない(左下写真)。

8月21日 多摩川原橋から稲城大橋までの多摩川右岸
 猛暑で無風。この区間にはニセアカシア林が続き、林間に適度に整備された遊歩道が続くが、河原植物調査を兼ねて歩いているので炎天下の堤防天端を行く。
 稲城大橋の橋脚の耐震補強工事がこの秋から行われ、計画では多摩川でたった1株になったえカワラハハコや下流域では珍しいヒロハカワラサイコ、そして多摩川最下流にあるカワラニガナがのきなみ瀬替えで掘削されることになるので、京浜河川事務所と施工主の東京都南多摩東部建設事務所の職員と現地確認をした。幸い、東京都が工事計画を変更して下さり、これら3種の河原植物は残されることになった。

8月19日 中央線鉄橋から谷地川合流点までの多摩川右岸
 立日橋から中央線鉄橋までの右岸に低水護岸工事が今春行われて完成した。この工事は税金の無駄遣いであるだけでなく堤防植生も魚類棲息地も荒らした自然破壊だと、市民から本会宛てに投書があった。住宅が迫っているから護岸補強をする必要は理解できるが、この堤防のり面は在来植生が多く見られたことは確かだ。それにしても堤防天端の舗装道路の幅が半端ではない。堤内地にすぐ車道があり、川側小段にも工事用道路があるのに、なぜこんな幅の広い道路を堤防天端に造ったのか意味不明。
 堤防脇に古い写真が貼られた看板が立っている。かつては大勢の市民が多摩川で水遊びをしている。
 鉄橋をくぐり上流へ。谷地川の先に広がる中州に鬱蒼と茂るのは樹林ではなくオオブタクサ。いずれも丈4m近くに成長している。
 堤防から谷地川縁に出るのにちょうど良く除草されている箇所が1つある。その小径を進む。キツノネカミソリが咲いている。その先でおじさんが一人黙々と機械で除草している。猛暑のなかご苦労さま。お陰で助かった。この先に美しい「水郷地帯」みたいになっている所がある。
 さらに上流へ進むと、道の両側にカワラケツメイの小群落が続く。他の河原植物と違ってカワラサイコは株数を正確に数えるのがたいへんなので10単位で目算するに約8箇所、点在するものも含めて合計約1800株。今春までの中州の工事に関連して一部工事用車両に踏み潰されたが埋土種子への影響はなかったようで、車道に生えている所もある。赤トンボの数がめっきり増えた。
 ダイサギ、アオサギ、トビ、ツバメ、ウグイス、セッカ。

8月15日 多摩大橋から日野用水堰上流右岸
 谷地川合流点から八高線鉄橋までの多摩川河川敷は大規模な河川改修が行われている。この区間の右岸側に新たに「せせらぎ」という名の分水が引かれて長靴でないと「中州」に入れなくなったので、多摩大橋から眺めるだけにする。予定通りの水量でしかも予想以上に流れが速いので子どもが渡るのは危険だ。もっとも分水を渡ってもその先は「水生植物」どころか4〜5mのオオブタクサの「森」でこの季節はまったく河川敷に踏み込めない。多摩大橋直下と八高線鉄橋直下に工事用道路があり、それを使ってなんとか水辺まで行けるが。八高線鉄橋下流高水敷にあったカワラサイコはなんとか囲みの中で育っている。
 八高線を越えて上流に向かうと真新しい低水護岸と高水敷が見える。中途半端に切れているが、今秋から下流へ延長される予定。いずれにせよ、本流は左岸側だし、右岸の堤内地はクリーンセンターだから万が一洪水になっても人家への影響はまずない。この一帯の護岸工事はどう見てもアベノミクスによる俄公共工事にすぎない。八高線鉄橋から谷地川合流点までの河川改修も左岸の治水対策としては効果があると思うが、自然再生ではけっしてない。土木工学者と植物生態学者の実験場でしかない。
 カワウ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、ツバメ、ヒヨドリ、ウグイス、セッカ、スズメ。

8月13日 長淵地先の多摩川
 お盆のせいか青梅線が異常に混んでいる。下奥多摩橋下では子どもたちが泳いでいる。長淵の市営プールはなぜか休業。駐車場にあるバリアフリーのトイレは広くてきれいだ。
 その前に広がる長淵の河川敷ではBBQを楽しむ若者と中年夫婦の2P。炎天下でのBBQなんて楽しいのだろうか。もっとも、炎天下の河原をただふらふらと歩いて河原植物の数をかぞえるほうが他人からすれば阿呆に見えるだろう。
 堤防から見渡すと草が茂っているように見えるが、じっさいに歩いて見ると造成して撒かれた小粒の礫が露出していてカワラニガナがあちこちで見られる。とは言え、友田のような礫河原ではないので、この季節に株数をかぞえるのはかなり困難だ。今回は昨年の調査結果を踏まえての環境変化の調査なのでカウントはしない。カワラニガナ以外の河原植物はないかと期待したが、見つからなかった。
 カワウ、アオサギ、ダイサギ、ホオジロ。

8月11日 二子玉川から丸子橋までの多摩川左岸
 京浜河川事務所ライブカメラで台風上陸時の多摩川の様子を見ると、大して増水していないようなので、増水後の河原の様子調べをやめて、下流で河原植物調査をした。強風で帽子が飛ばされそうなので炎天下のつまらない高水敷歩きは疲れた。予想通り河原植物はなかったが、調べないことには「ない」と言えない。二子玉川から下流1qは高水敷の工事が終わったばかりで簡易舗装遊歩道以外は芝養生中で立入禁止だらけ。低水護岸を歩いていたら、工事関係者が芝生を踏み越えて近づいてきて「芝生を踏むな」と言う。踏んでいるのはお前だろと言いたかったが大人げないのでやめた。

8月3日 友田地先の多摩川(右岸)
 猛暑のなかの河原植物調査。灼熱の太陽と礫河原の暑さは半端ではないが、今回最も気になったのは暑さではなく圏央道橋から絶え間なく聞こえる車両走行の騒音。シューシュー、カタンカタンとひっきりなしに聞こえる。夏休みのせいか圏央道高尾山貫通のせいか、過去に経験のない大騒音。その圏央道橋の真横に老人ホームがある。
 多摩川唯一の自生カワラノギクは、専門家言うところの抽苔(茎を伸ばした開花予定株)が48株(8+1+1+38)、ロゼット1株。昨年の調査では74株だったのでだいぶ減った。そこから上流に広がる礫河原に2万株以上のカワラニガナが生えているが、苔が繁茂したりクズのツルがだいぶ伸びてきて、先行きが心配だ。
 左岸の水辺は夏休みの日曜日ということもあってBBQを楽しむ人たちで大賑わい。右岸は幸い2団体のみで静かだ。養豚場の臭いがたまに漂ってくるのが知られているからだろうか。
 セグロセキレイ、ホオジロ。猛暑のせいかその他はお休み? 

7月30日 睦橋下流左岸と上流右岸
 猛暑ながら風があるので少し楽な河原植物調査。
 睦橋下流左岸、福生南公園地先の礫河原は下流半分にカワラニガナが分布している。昨秋の工事の影響はなくて良かった。合計507株。
 橋を渡り右岸の上流へ。高水敷の車道の川側にカワラサイコが25株、土手川の草地に29株。小さな広場のようなところにかつてカワラノギクの植栽があったが消えて、昨年はカワラヨモギが植えられていたが、いまはクズ等に覆われて確認できない。代わりにオニユリが咲いていた。
 五日市線鉄橋脇から礫河原に入る。カワラバッタが跳ぶ礫の間にカワラニガナが25+10+73+31株と点在。さらに下流方向へ91+24株、水辺に近い礫河原に362株、草が茂る下流部手前付近で576+306株。去年の数十倍に増えており、合計で1498株確認できた。
 アオサギ、トビ、ツバメ、イワツバメ、ヒヨドリ、ウグイス、ホオジロ。

7月26日〜27日 夏の水源合宿:笛吹川万力公園と釜無川信玄堤
 毎年夏の合宿の多くは「多摩川水源合宿」だったが、現在のメンバーで体力的にも興味関心においても行ける場所が限られてきたので、去年は荒川水系の三峯神社周辺に行った。今年は、いわゆる「信玄堤」を見るのを兼ねて、山梨県内を流れる笛吹川と釜無川へ(いずれも富士川水系)。
 笛吹川は、鉄道駅から近くてよく自然観察しやすいところとして、中央本線「山梨市」駅近くにある万力公園へ行った。ここには「雁行堤」という古い「信玄堤」が遺されている。ちょうど花火大会があるとのことで、公園内の堤防付近が花火打ち上げ場となるため立入禁止のロープがぐるっと張られていたが、日中は関係なさそうなので勝手に入ってクヌギ林や松林、万葉植物、ミニ動物園、差出堰、堤防などを見てまわり、最後にどう見ても「池」としか見えないチドリ湖畔を経て、大嶽神社に寄り、亀甲橋を渡って左岸へ。市内縦横に豊富な水が音を立てて流れる水路をたどりながら、今夜の宿へ。駅からやや離れているが、周囲は桃や葡萄の畑のある、地方の老舗旅館。
 ただ残念なことに、筆舌に尽くせぬ猛暑。西日の差す部屋ではクーラーも効かず、思わず屋外に出ても風がなく、近くのお寺まで散歩に出たが境内に木がほとんどない。日が沈んでも、翌朝早くに散歩に出ても、猛暑は弱まらず、異常気象のせいなのか、「これぞ夏の甲府盆地!」なのか……。
 翌日は竜王駅からシティバスで信玄堤へ。釜無川と御勅使川が合流する下にある氾濫地帯。しかしいまは河川改修等でその面影はない。広大な河川敷の向こう、遙か先にかすかに鳳凰三山と甲斐駒ヶ岳が見える。東に富士山頂ビルの谷間に垣間見られるバスで甲府駅へ。駅近くで名物ほうとうを食べて最後の汗を噴き出させて、ようやく涼しい八王子への帰路についた。
 甲府盆地のこの猛烈な暑さの中で少し気持ちを落ち着かせてくれたのが、万力公園から夜空に打ち上げられる大玉の花火。花火をこれほど間近に見たのは数十年ぶりだ。

7月23日 京王線鉄橋から関戸橋右岸、同左岸から府中四谷小学校まで
 梅雨明けの猛暑のなか、河原植物調査。右岸堤防天端にカワラサイコ30株。
 左岸に渡り、京王線鉄橋から200mほど上流川側小段にカワラサイコが2株+2株+57株。堤防のり面に137株、堤防天端付近に15株。高水敷で最も目だつのはハルシャギク。
 この地域は昔からハルシャギクが多い。最初は誰かが花咲か爺さん気取りで種子を撒いたと記憶する。
 カワウ、アオサギ、ツバメ、ウグイス、セッカ、ホオジロ、スズメ、ハシブトガラス。

7月15日 セミの声
 八王子市片倉でニイニイゼミの鳴き声。同16日文京区白山でミンミンゼミの鳴き声。同21日東村山市多磨全生園でニイニイゼミの鳴き声多数。ニイニイゼミは湿気が必要、ミンミンゼミは乾燥した暑さが必要でいまは都心に多い。

7月13日 万年橋上流左岸
 河原植物調査。昨年は4月早々に調査したのでカワラニガナの開花期に再調査すべくようやく時間がとれた。万年橋近くから水辺に出るルートは水路変更とアイアシ繁茂で礫河原に出られないので、上流の水神ルートから礫河原に入り、右回りに礫河原を一周した。大した苦労せずに発見できるほど花をたくさんつけた大株のカワラニガナがあちこちにあり、調査がしやすい。見た目は同じような礫河原でもカワラニガナ群落がある所と全然ない所があって、植物生態的にどう違うか興味深い。99, 43, 24, 1, 50, 104……といった感じで小群落が点々とあり、総計840株あった。増水で冠水しても100株ぐらいは生き残って代々続いていると長年思っていたが、昨年秋に対岸を調べたらなんと優に1万株以上のカワラニガナがあり、種子の供給源はこっちかとわかった。その対岸の礫河原は夏にBBQ客が多く、今日も4Pほど来ていた。
 カワウ、ダイサギ、アオサギ、トビ、セグロセキレイ、ウグイス、オオヨシキリ。