多摩川の自然のニュース:2010年4月〜6月

新しい日付順に配列してあります。水色は多摩川水系桃色は他の川等緑は会議等です。
画像は重いので質を落としてあります。画像は約4ヶ月で削除します。

2010年7月以後
2010年1〜3月

6月29日 下奥多摩橋から多摩川橋までの右岸 曇り、湿度100%の気分
 先日会員より、多摩川でカワラハハコを見つけた、との情報を得て、ようやく時間をつくって見に行った。ついでに長淵の造成地を視察したが、とくに変わった点はなかった――つまり殺風景な風景のままだった。土手際でヤブカンゾウが咲いていたが、造成地はアレチマツヨイグサ、ヨモギ、イヌタデ、エノコログサ、ブタクサなどの新芽が出ているだけだった。BBQの道具を持った青年10人ほどが車から降りて来たが、造成されたので来たのではなく来たらこんなになっていたので驚いていた。
 友田地先の河原は万単位のカワラニガナが辺り一面花を咲かせている。キササゲやブッドレアも花をつけており、カワラニガナやカワラノギクが生えているこの丸石河原も徐々に一般の草や木に覆われつつある。そのカワラノギクは順調に成長している。さて、目当てのカワラハハコだが、1本の茎を1株と仮に数えるならば15本が集まって咲いており、可憐な感じが美しい。私たちが知る限りでは現在これが多摩川で唯一の株であるが、ちょっと大水が出たらおしまいという地にある。2007年の大増水以来の大発見で、周囲にさらにないか探したが、残念ながら見つからなかった。
 圏央道橋真下の工場跡地に何ができるのか気になっていたが、なんと老人用ケアハウスとか。人生の最後の大切な時を24時間自動車騒音の下で暮らせというのだろうか。
 カワウ、アオサギ、ツバメ、セグロセキレイ、ウグイス、ヒヨドリ、ホオジロ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

6月20日 河口右岸から川崎大師 曇り、風あり
 定例自然観察会。昨年は風雨がひどくて悲惨だったが、今回は梅雨はどこへという天気。ただ残念ながら潮めぐりが悪く11時満潮で干潟の生物を観察することがあまりできなかった。それでもわずかに残った干潟でコメツキガニの潮招き踊りを見たり大きなアシハラガニを触ったり、コアジサシがダイビングするのを目の前で見たりした。
 ウラギクの小群落があったところはアシが浸食し、今秋の開花が危ぶまれる状態となった。そのアシ原にはいったい何羽いるのかと思うほどオオヨシキリがあちこちで囀っている。
 午後少し潮が引いた頃にダイシャクシギとチュウシャクシギが登場。その先にまだ冬鳥のスズガモもいた。
 河口に向かう途中、旧いすゞ自動車工場跡はスーパー堤防用土盛りが積まれ帰化植物園みたいだ。さらにその先の空き地はパトロールカーや白バイの練習場になっていた。先端まで行った人の話では、多摩運河脇の干潟が小さくなり、他方その手前の水辺の無断造成公園がますます拡大していたとか。
 午後は上流に向かい、干潟館で数種類のカニや小魚を観賞するとともに河口の自然の現況をうかがった。
 そこからさらに川崎大師に向かい、ボランティアガイドさんい海苔養殖記念碑と長十郎梨記念碑ほかいくつかの石碑を案内していただいた。
 カワウ、ダイサギ、コサギ、カルガモ、スズガモ、ダイシャクシギ、チュウシャクシギ、シギsp、ウミネコ、コアジサシ。ツバメ、イワツバメ、オオヨシキリ、スズメ、ハシブトガラス。

6月12日 友田地先の多摩川 暑い
 カワラノギクプロジェクトで自生地の調査。2mメッシュで付近一帯のロゼット数を調査した結果、今年開花しそうな株が81、まだそこまで成長していないロゼットが58あった。一昨年の秋にかろうじて生き残った3株の種子が広がって育ったロゼットで、これまで気づかなかった所にも数株大きく成長しているのを発見。この秋が楽しみだ。
 カワラニガナも大きく育っている。辺り一帯カワラニガナの大群落。これは10月中旬まで咲くから、まだまだ増えるかもしれないが、キササゲも徐々に大きくなり始めているから次第に他の草等と一緒に日陰をつくってしまうかもしれない。ミネヤナギのように這っているヤナギの小群落がある。低地では高さ5メートルぐらいになると図鑑には書いてあるが、3年経っても起ち上がらない。違う植物かも知れない。
 対岸ではBBQをする若者が大勢来ている。友田小学校下の崖の遊水池でユキノシタが咲いていた。オニグルミの実も大きくなった。
 わが家のまわりではホトトギスが朝から晩まで大声で鳴き叫んでいるが、ここでは声が聞かれなかった。
 それにしても暑かった。除草でなくて良かったが、それでも疲れた。
 ツバメ、イワツバメ、セグロセキレイ、ウグイス、メジロ、ホオジロ、ハシブトガラス。

5月31日 多摩大橋から谷地川合流点まての多摩川右岸 曇り
 左岸の護岸工事と同時に右岸の自然生態系保持空間の機能修正工事をこの春行ったので事後調査をしなければと思いつつ、その時間がとれなかった。
 釣り堀の魚がずいぶん減ったとは釣りに来た人の話。ウシガエルが鳴いていた。
 土丹の出た水辺に出る。以前と変わった様子はない。起伏がずいぶんなくなったが、土木研究者によると増水時の礫の流下が少ないためだとか。赤紫のシランと白花のシランがあった。カワラケツメイをここで昨年発見したが、まだ芽は小さいのできちんと数えていないがおよそ200株ぐらいか。ミヤコグサやニガナ、ニワゼキショウ、スイカズラ、ノイバラなどの花が満開。
 造成地に着くと、ブタクサやオオブタクサ、カナムグラ、ニセアカシアなどの新芽が目立つようになる。来年の夏には立ち入れないほど丈高く繁茂しているにちがいない。自然生態系保持空間機能の回復を目指すならば、もっと土砂を切り下げなければ効果が薄いと思われる。関係者によると工事途中で雨季に入ったので、今秋続きの工事をするらしい。池や窪んだ所に水がたまったところにオオフサモが繁茂している。右手の低湿地帯にミクリの小さな群落があった。
 さらに工事用道路跡を伝って下流に進み右に折れると谷地川に着く。工事期間中は橋が架かっていたがいまはないので来た道を戻らなければならない。もっとも途中からオギ原の縁を通る抜け道がある。蔦の絡まるニセアカシアの大木があり見事だが、枝からぶら下がった紐が意味深で気味が悪い。その脇に野生化した桃の木があってたくさん実をつけていたが、まだ小さい。
 カワウ、ダイサギ、アオサギ、カルガモ、イカルチドリ、キジ、ツバメ、イワツバメ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、ウグイス、オオヨシキリ、セッカ、シジュウカラ、ホオジロ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス。

5月29日 多摩川永田地区 曇り
 カワラノギクプロジェクト春の除草第2回。雨が降りそうで降らない涼しい気候のうえ、再造成地で草丈が低いので作業は例年になく楽だ。初めての参加者向けに若干の講習と選択的除草の練習をしてもらっている合間に常連は前回の続きの作業を行う。一見カワラノギクの実生が一つもないと思えた所に明治大学の学生が調べて60株近くあったとのことだったが、今回は実生の葉が伸びており、見てすぐにそれとわかる形になったため新たに実生が数十株見つかった。2時間の作業で当初目標の再造成地の除草は終わった。通称ツルハシ隊のみなさんにはB工区とC工区の境にあるブッシュを刈り払ってもらった。その周辺にもロゼットが点在しているほか、B工区の川側には実生がたくさん生えていた。
 ところで、永田橋上流右岸の堤防のり面は在来植生の宝庫だが、今回中途半端な除草が行われ、レンリソウやノジトラノオなどが刈られてしまったが、ここを長年調査している人の指示によるものなのだろうか、疑問が残る刈り方に思える。
 コジュケイ、キジバト、ホトトギス、ヒメアマツバメ、ツバメ、イワツバメ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、ウグイス、シジュウカラ、エナガ、ホオジロ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス、ガビチョウ。
 カジカガエルの鳴き声。

5月25日 万願寺地先の多摩川 快晴
 八王子片倉ではホトトギスの鳴き声がようやく聞かれ始めた。
 万願寺地先の多摩川堤防は1週間ぐらい前に除草が行われたようで、きれいになっている。除草期間調整区域ではレンリソウが39株開花している。ニガナが満開。ワレモコウやツリガネニンジンの葉が伸びた。今年はしかし天候の所為かレンリソウの開花が少ない。昨年はスズサイコの成長が早くて除草時期と重なってしまったので、今年は実験的に早く除草してみたい。
 池の周りには今日もカメラマンが6人陣取っている。ラジコン飛行機やゴルファーはいない。
 エノキに実がたくさんついている。河川敷の日当たりはハナウドが満開、樹林内ではイボタノキが満開。誰かが植えたのか自然に増えたのか数年前から河川敷内にコオニユリの群落がある。水辺のカワラケツメイはまだ新芽が出たばかりだが、25株しか見つからないのはちょっと心配だ。
 カワウ、トビ、キジ、ツバメ、ヒバリ、ウグイス、ホオジロ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

5月16日 二子玉川から上流約2キロ、さらに岡本民家園、静嘉堂文庫 晴のち曇り
 定例自然観察会。
 工事中で店が一軒もない二子玉川駅から国道246に沿って川に出て右に曲がると兵庫島に野川を渡る橋に着く。網を持って家族連れで遊びに来ている人がいるが、魚がいるだろうか。と心配になるほど、相変わらず兵庫島前の人工池も、無粋な護岸が並ぶ多摩川本川もじつにつまらないところだ。少し上流にある新しい護岸工事跡に珍しい帰化植物や園芸植物が生えているのでおもしろいという程度。コゴメバオトギリがここまで侵出。ハルシャギクやオオキンケイギクなどは言うに及ばず。世田谷区地先にあるグラウンドは、駅の近くから延々と渋谷区民専用。ハナウドやノイバラの花が見られる辺りでようやく世田谷区民用のグラウンドになる。その境にある駐車場は堤内地との車の出入りが激しくて危ない。
 堤防に上ってやっと安心。ニワゼキショウやブタカタバミ、ヤセツルボ、コウゾリナなどが咲いている。河川敷内に残る旧堤防には世田谷では希少種になったカワラサイコが見られ、ナワシロイチゴやオトコヨモギ、カントウタンポポなどが残っている。ここがいつまで残されるか心配ではある。砧の浄水場へ水を引くポンプ施設は風情がある。
 堤内地に入り、改修されてまったくつまらなくなった野川を渡り玉堤通りを越すと、岡本民家園まで約500メートルほどが花壇になっていて色とりどりの花が咲いている。ここはもと堀があったらしい。民家園手前を流れる次太夫堀(丸子川)ではサジオモダカとキショウブが満開。園内ではミズキの花が満開。
 民家園、八幡神社を見ながら、谷戸川に降りて右に曲がると静嘉堂文庫の裏の池と用水に出る。そこからケヤキやムクノキなどの林の下の坂道を上ると静嘉堂文庫と美術館、岩崎彌之助の立派な廟、記念植樹されたシャクナゲやトチノキなどがある。今年度の観察会の年間テーマは「多摩川と美術館・博物館」なので、美術館で収蔵品を鑑賞した。
 カワウ、コサギ、カルガモ、チョウゲンボウ、キジバト、コゲラ、ツバメ、ヒバリ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、ウグイス、オオヨシキリ、セッカ、シジュウカラ、スズメ、ムクドリハシブトガラス。

5月15日 永田地区の多摩川 快晴のち晴れ、爽やか
 カワラノギクプロジェクト春の公開除草1回目。このプロジェクトは市民と行政と研究者の三者が協力して行うもので、多摩川の管理者である京浜河川事務所からは環境課長や係長、出張所長のほか元所長まで参加、地元福生市からも担当課長と職員が参加された。研究者は倉本先生ほか明治大学の学生が大勢参加。市民はいつものメンバーは揃ったが新規参加者がごくわずかだったのが残念だった。C工区での実生やロゼットを見てから、再造成区の除草を行った。丈20センチぐらいのイタドリでも容易に引き抜けない。石をどかすと簡単に抜ける場合があるが、根元に太い切り株がついていることがおおい。これが引っかかって抜けないらしい。でもまだ丈は小さいし量もさほど多くなく、さらになんと言っても風が爽やかなので苦にならない。
 ニセアカシアが満開。土手ではナンテンハギが咲いていた。
 カワウ、カルガモ、キジ、コジュケイ、ツバメ、イワツバメ、ウグイス、シジュウカラ、ホオジロ、カワラヒワ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

5月8日 万願寺地先の多摩川右岸 快晴
 風が強いが暖かで、野球、サッカー、凧揚げ、ドラムの練習、キャッチボール、水遊び等々と人出が多い。強風でもラジコン飛行機が3機飛んでいる。
 池のカメラマンは今日は1人で、代わりに子どもたちが遊んでいる。キショウブが咲いている。
 サバイバルゲーマーもゴルファーもいず、平和な多摩川の姿だ。
 在来植生保護のための除草時期調整区域の柵が修復されていて良かった。今年もレンリソウが目算2200株、色はまだ薄いが開花株が10あった。ワレモコウやクサボケが繁茂している。下流側の調整区ではアマドコロが約50株、開花は3株だった。
 堤防のり面ではほかにハタザオとコマツヨイグサが満開。樹木ではニセアカシアとフジが満開。イボタノキも咲いている。林の合間にハナウドやクサノオウなどが咲き、野鳥がたくさん囀っている。
 アオサギ、トビ、キジ、カワセミ、コゲラ、ツバメ、イワツバメ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、ウグイス、セッカ、シジュウカラ、ホオジロ、カワラヒワ、スズメ、ムクドリ、ハシボソガラス、ハシブトガラス。 

5月4日 多摩川永田地区 快晴、暖かい
 カワラノギク・プロジェクトのオプション除草。今回は多摩川の水量が減って堤防からの出入口を閉ざしていた水流も消えて無事に通ることができた。
 藤が満開だが、ニセアカシアはまだ蕾。オニグルミが雄花をたくさん垂らしている。堤防はウマノアシガタが一面に咲き、カラマツソウやワレモコウがますます成長した。堤防下の「自然生態系保持空間」の看板の脇に自家用車が2台入ってベンチなど広げているが、どこから侵入したのだろうか。
 永田地区A工区の再造成地もイタドリやオニウシノケグサがどんどん成長を始め、霜枯れていたイタドリも見事復活した。旧造成地にあるカワラノギクのロゼットの周囲半径50センチぐらいを除草した。予想以上にロゼットが残っている。増水がなければ今秋多くが開花すると思われるほど生育が良い。逆に今春出るはずの新芽がまったく見られないのが気になる。(BC工区では4月末からたくさん出ているが。)
 イカルチドリ、キジ、コジュケイ、イワツバメ、ヒヨドリ、ウグイス、ホオジロ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

4月29日 多摩川永田地区 曇り時々雨
 多摩川カワラノギク・プロジェクトのオプション除草を予定したが、雨で作業ができず、福生に昼食をとりにいっただけという結果になった。が、新緑の自然はさわやかだった。先日来の雨で八高線鉄橋付近もここ永田橋付近も多摩川が増水している。橋梁工事で立ち入れないため、右岸堤防を上流へ向かって迂回ルートで永田地区に入るしかない。堤防のり面はウマノアシガタが満開で、ワレモコウやカラマツソウがだいぶのびてきた。HL出入口を兼ねる林の中のルートを通ろうと思ったら、増水で道が水没して通れず、結局多摩大橋近くの野球場を経なければならなかった。ここからの道も永田橋の工事で通りぬけられないためもあって通行人が減り藪と化しており、ピラカンサの林は枝が下がって通行できない。かろうじてA工区に着く頃には大粒の雨が降り、風も強くて傘もさせず、除草作業はできなかった。伸びたイタドリは遅霜にやられて焼けていたが、雑草は強くいずれこれは復活する。再造成区からもイタドリやオニウシノケグサなどがすでに生えている。五月の公開除草の頃には50pぐらいに成長していると思われる。帰路は、野球場まで戻るのが面倒なので永田橋脇の藪を経て堤防に出た。いまのところまだ通行可能だ。
 コジュケイ、イワツバメ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、シジュウカラ、エナガ、ホオジロ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

4月26日 下奥多摩橋から多摩橋までの両岸 快晴、暖かい
 昨日、西暦2010年の多摩川を記録する運動の調査日だったが、本業と重なり参加できなかった。調査担当者から、「長淵対岸にできた新しい護岸付近で地元の釣り団体が河川敷を耕し桜の木を植えると言っている。あんたたちはいったい何をしているのかと聞かれたので調査をしている旨伝えたら、ゴミ拾いもしないでなんだ!と言われたあげく、通り過ごそうとしたら、釣りの会の道だから通させない」と言われた、との連絡があり、気になったので見に行った。
 釣りの会の道だから河原を通さないというのは不当だが、水辺から住宅地へ上がる階段は私有地かもしれないので必ずしも不当とは言えない。それならばせめて「この先は行き止まりだ」と言ってくれれば良いはずだ。桜を植えるというのがどの場所か必ずしも明らかでないが、新しい護岸だったら反対しなければならない。この釣りの会がつくったと思われる休憩地があり、草が生えないように古絨毯が敷き詰められている。増水したら流出するのでやめて欲しい。
 オドリコソウ自生地が草刈りされて群落が消滅。付近にわずかに残るだけとなってしまった。左岸の河原にケヤキの大木が数本あったが、すべて伐採された。そのうち1本の年輪を数えたら35本あった。数年前に地元国会議員まで来てこの付近の河原の整備をしたいと町内会が訴えていたが、この木を切ったら増水した水が住宅のある崖に直接当たって危険だと私が主張し、京浜河川事務所も予算がないから切れないと言って断ったが、今回誰がこの大木を切ったのだろうか。馬鹿としか言いようがない。その理由は次回の洪水が明らかにするだろう。
 崖際に立つマンション下の新しい護岸に向かう。アオダモの花が咲き、崖にへばりつくようにハハコグサやスミレ、ギボウシ、クサイチゴなどが生えている。上から大量の湧水が流れ落ちている。この崖下に多様な植物や生物があったと思われるが、いまは砂利とコンクリートブロックに埋まってしまった。
 右岸は砂利が広く敷き詰められた広場となった。この付近の大規模な河川改修と左岸の無粋な護岸は、左岸の崖が増水で削られ崖上の民家が危険になったための措置だというので私たちは反対しなかったが、その際、上流からの流れが直接崖にぶつかるのを和らげるために右岸の河道も同時に修正した。そのことによりこの周辺の河川環境が改善されることが期待された。すなわち、かつて多摩川最大のカワラニガナの群落地であった当地の礫河原再生である。しかしながら、いま目前に広がる河川敷は、砂利が敷き詰められ、さらにローラーで均し押し固められたようになっていて、自然再生などとうぶん見込めない状態にある。この土地を見て運動場として使おうと思い立つ人がいても不思議ではなく、じじつ青梅市は国会議員をふたたび使ってここに運動場を造る計画を立てつつあると聞く。もしそういう計画がほんとうにあるならば、これと断固戦わなければならない。
 増水の際に、下奥多摩橋の下を抜けて来た水流が左岸の新しい強固な護岸にぶつかり右岸に蛇行するが、右岸も強固になったためふたたび左岸へ向かう。そうして左岸の新しい護岸の下流端からさらに下の住宅接近地へ増水した水が迫る。その時、これまでは水流を抑える役目を果たしていたケヤキの大木もすべて伐採されてしまったため、住宅の迫る左岸の崖の斜面に直接水流がぶつかり、この崖を削る。――これが長年当地を見てきた私たちが思う増水時のシミュレーションである。もし、長淵地先の河原を、当初の予定の(はず)通りに礫河原が再生できるような形状にすれば、増水時に、堤内地への影響が小さい右岸を若干削りつつ幅広い水流となって勢いを減じるため、左岸下流側への水圧を下げるだろう。
 京浜河川事務所では、研究者等を集めて礫河原再生について数年協議しているようだが、漏れ聞く候補地はみな緊急性や必要性が乏しい。ほんとうに礫河原を再生したいと考え、研究者も実験や調査をしたいなら、治水でやらなければならない場所が現実にあるからそこを利用すれば良いはずである。長淵・千ヶ瀬地区のように。
 ……などと内心憤慨しつつ、友田の河原に出て、1万株を越えるカワラニガナの群落を眺め、自生のカワラノギクのロゼット約60株を確認して、友田水管橋脇のカフェへと向かった。
 カワウ、アオサギ、イカルチドリ。トビ、キジバト、ツバメ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、ウグイス、シジュウカラ、メジロ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

4月18日 奥多摩湖〜大麦代園地 晴れ、暖かい
 定例自然観察会。今年は、多摩川と最寄りの博物館・美術館めぐりが年間テーマで、今回は「水と緑のふれあい館」を訪ねた。
 40数年ぶりという積雪が東京であった翌日、つまり今朝は濃霧が立ちこめ気温も低かったが、日中は春らしい穏やかな天気となった。
 青梅線ホリデー快速は予想通り御岳駅で大勢降りたが、それでも終点の奥多摩駅でも改札口を出るまで長い行列が続いた。その行列はそのままバスの行列となり、奥多摩湖行きの超満員の臨時バスが3台出てもまだ大勢列をなしている。
 新緑が眩しい奥多摩湖から鯉がいっぱいいる湖の畔を5分ほど行くと、大麦代園地入り口に着く。この園地でのサクラのお花見は今日が2度目で、1度目はお元気だった横山理子さんも参加しての自然観察会だった。その頃と比べてサクラの木が減るとともに木がまだ若い感じがする。鹿害等で一時期かなり荒れた時代があったためだろう。
 いまは染井吉野や大島桜のほかに江戸彼岸や枝垂れ桜等々いろいろな種類のサクラが植えられている。崖にはスミレやタチツボスミレ、エイザンスミレ、テンナンショウなどが咲き、ヤブツバキやミツバツツジが咲き、日陰ではまだコブシやキブシ、アブラチャンなどの花が見られた。ガビチョウも鳴いていたが、山らしくヒガラがツッピンツッピンと囀っていた。しかし、オートバイの騒音が凄まじく、暴走族らしきものも混じって静かに自然を堪能するという雰囲気ではなかった。
 湖の対岸に聳える三頭山は一昨日の雪で地肌が白い。
 トビ、イワツバメ、ヒヨドリ、ウグイス、ヒガラ、エナガ、メジロ、スズメ、カケス、ハシブトガラス、ガビチョウ。

4月11日 永田地区〜永田橋左岸〜多摩川中央公園 晴れ、暑い
 カワラノギク・プロジェクトに関わる市民団体の総会と現地視察に参加した。
 永田橋から右岸を上流に向かう堤防のり面は植物の宝庫。ワレモコウやウマノアシガタ、クサボケ、トウダイグサ、スミレなどがいまは咲いたり芽をのばしたりしている。所々にサクラが生え花を咲かせている。
 通称永田地区のA工区からC工区でカワラノギクの発芽状況を見る。A工区内の再造成地区はまだ新芽が出ているかどうかわからない。BとCの境目には昨年までに出ていたロゼットと並んでごく小さな実生が見られる。
 ツクシやムラサキケマンなどを見ながら永田橋に戻り、右岸の断崖の上から永田橋下流一帯を見下ろす。40名ぐらいの団体が機関銃を片手にサバイバルゲームをしていた。彼らはどうやってこの地域に入ったのだろうか。橋脚工事中で入り口がふさがれているはずだ。
 左岸から右岸を眺めて、カワラノギクの種子が下流に自然に広がるための礫河原再生の可能性を考えた。河原にある砂利処理業者作業場から流出するヘドロに下手に手をつけたら文字通り泥沼と化す。
 多摩橋下流の礫河原はだいぶ草が茂ってきたが、カワラニガナがまとまって残っているところがある。高水敷や堤防はお花見客で賑わっていた。
 カワウ、ダイサギ、タシギ?。キジ、キジバト、ツバメ、イワツバメ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、アオジ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

4月4日 高月浄水場から滝山城趾、古峯ヶ原園地 曇り、寒い
 国分寺市民の多摩川を歩く会の定例会に参加。高月浄水場内の池は、人間が立ち寄れないのでカモが安心して休める場所になっている。今日もカルガモとマガモが楽しそうにグワグワと言いながら遊んでいた。レンゲが咲き始めた田のあいだを抜けて堤防に出る。秋川を見つつ昭和用水堰へ。カキドオシがたくさん咲いている。笹藪が多いのでウグイスがあちこちで囀っている。上空ではトビが舞い、ニセアカシアの梢にはオオタカがとまっている。水辺はオオバンとカワウ、コサギ、ダイサギなど。
 振り返れば、高月城趾から滝山城趾にかけての丘陵の麓に桜があちこち咲いている。
 滝山城趾への急坂を登ると、満開のヤマザクラ。二の丸の千畳敷広場にはお花見を楽しむグループがあちこちで昼食をとっている。北向きの丘の縁に立つと、秋川と多摩川の合流点や昭和用水堰が良く見える。それにしても寒い。本丸、二の丸をそこそこに加住丘陵の尾根を東に進むと5000本桜≠ヘあまりに言い過ぎだと思うが、窪地一面にサクラが咲いている。全体で8分咲きといったところで、こちらは人が少ない。樹高はあるのに幹がどれも細い。空が灰色なので下から仰ぐサクラの花は冴えない。尾根から見下ろすと見事だが、曇り空が惜しいしかも寒い。にもかかわらず、大勢の花見客が尾根をぞろぞろと歩いている。が、ほんとうに花見を楽しめるのは来週かもしれない。
 カイツブリ、カワウ、ダイサギ、コサギ、マガモ、カルガモ。トビ、オオタカ、キジバト、セグロセキレイ、ヒヨドリ、ツグミ、ウグイス、メジロ、ホオジロ、カワラヒワ、スズメ、ハシブトガラス、ガビチョウ。