多摩川の自然のニュース:2016年10月〜12月

新しい日付順に配列してあります。水色は多摩川水系桃色は他の川等緑は会議等です。
画像は重いので質を落としてあります。古い画像は半年ぐらいで削除します。
この記事の筆者はすべて柴田隆行です。

2016年7月〜9月
2016年4月〜6月
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11月28日 多摩大橋から拝島橋までの多摩川右岸
 外仕事がない日はなぜか雨。だが今日は徐々に晴れ間が見えてきた。
 数年続いた河川改修が終わった多摩大橋右岸上流部の様子を見に行く。とくに変わった様子はない。左岸の水再生センター前の水辺にカワウ約120羽、ダイサギ・コサギ約100羽、アオサギ数羽が集合。誰かが近くに寄ったのか一斉に飛び立つと圧巻。夏に来たとき低水敷でカワラケツメイがあちこち見られたがこの時期は見つけにくい。黒い種子をまだつけているものが数株。
 人工のせせらぎ水路は水の取り入れ口が詰まって水が流れていない。こんなことでは水生生物は生きられない。日野用水堰にもカワウと白鷺がずらりと並び、湛水面ではオオバンの群れ。
 日野用水堰から拝島橋へは広大な藪の中を抜けて行かねばならず「行くぞ」という意志が必要だが、いまはよく踏まれた径があり、季節的に雑草が枯れたことも加わって楽に突破できた。さらにHL住民のためかよく踏まれた径が橋付近にも縦横にあり、快適に橋に着けた。ここに多摩川でいまや2箇所しかない河原植物があり、近々橋脚工事が始まるが無事を確認できて良かった。
 拝島橋を左岸へ渡り、川に一番近いバス停「田中町」へ。
 カワウ、ダイサギ、コサギ、アオサギ、オオバン、イカルチドリ、コジュケイ、キセキレイ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、スズメ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ガビチョウ。

11月20日 羽村堰上流から永田橋までの多摩川
 定例自然観察会。羽村堰下橋までは左岸、それ以降は右岸を歩く。堰上流左岸は今月5日に来たが、そのとき満開だったカワラノギクの花はほぼ終わり、種子をつけている。ロゼットもたくさんあるので来年もまとまった群落が見られるだろう。カワラニガナも多数見られる。運動場下流にアレチウリが猛威を振るって予期せぬ芸術作品を創り上げている。堰下橋の工事のため、右岸高水敷にあったニセアカシア林が幅10mほど水辺から堤坊まで伐採された。堰下橋下流右岸の堤坊のり面にツリガネニンジンの花が10株ほど見られる。市営キャンプファイアー場から藪の中の径をたどり、途中K13(かつてのカワラノギク自生地)の現状を見るため2度ノイバラとピラカンサが茂る藪に突入。昨年同様K13の河原植物は絶滅した。野球場を抜け、堤坊を下流へ。途中、カワラノギクの保護実験地である永田地区A工区とB工区を見学。ここのカワラノギクは堰上流のものより花びらの色が濃い。堤坊のり面南側にはツリガネニンジンやナンテンハギの花が見られるほか、ヨツバハギやレンリソウの葉が見られた。
 なお、永田地区A工区で会員から聞いた話だが、去る10月30日のカワラノギクPJの日、A工区に先に来ていた初老夫婦はたんに野鳥の写真を撮るのではなく、礫を掘り起こしニセアカシアの幹を組み立て、その幹にワーム(虫)を置いたりカワラノギクを抜いて飾りにしたりしたうえ野鳥の声のテープをかけるなどしていたとか。他の地区でも生態を無視して撮影に夢中になる人たちをしばしば見かけるが自分勝手な行動はやめてもらいたい。
 カイツブリ、カワウ、ダイサギ、アオサギ、オオバン、カルガモ、カモ(アルビノ)、イソシギ、カワセミ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ジョウビタキ、ツグミ、ウグイス、スズメ、ムクドリ、オナガ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

11月18日 関戸橋架替工事説明会
 約16年間かけて関戸橋が全面的に架け替えられる予定だが、今年度は仮橋の半分が上流側に建設される。瀬替えで関戸橋上流中州の中央を掘って水を流すため、そこに生えている河原植物等(カワラノギク、カワラニガナ、カワラケツメイ、カナビキソウ)が消失する。これを移植や種子採取等により可能な限り工事後まで保存する手だてを施工主である東京都は模索中である。
 カワラノギクは今春中州の一部に播種と移植を行い、本紙で紹介したように元気に発芽・生育し成功したが8月の増水ですべて流失した。だがカワラノギクほか河原植物が元からあった中州下流部にカワラノギク3株を含む河原植物が生き残ったので、これをどのようにして守るかが今年度工事での自然保護上最大の問題になる。
 しかし、都は、架替工事の説明を過去4年受け自然保護上の留意点を助言してきた私と、カワラノギクの種子採取および播種を現地で指導した明治大学農学部の倉本氏と岡田氏の3人を前に、近隣住民向けパンフレットを以て通り一遍の工事概要および橋脚工事計画の説明で済ませようとした。しかも、詳しくは「学識経験者」某大学某教授の指導のもとで実施するという、文字通りナンセンスでまったく不誠実かつ失礼な態度で、呆れるほかなかった。
 東京都に河原植物を本気で保護する気があるなら、都が委託した調査会社が毎月行っている現地調査結果をもとに何が何株どこにありそれが増水で流失したかしなかったか等のデータを示し、1株ないし1種類ごとにその保護策を検討するべきである。しかし、都は増水後に生き残った稀少植物にいっさい触れずに「説明」を済ませようとした。思わず今話題の豊洲や東京オリンピックの都の対応を思い出した。時間の無駄だった。

11月8日 相模川
 今年も相模川のカワラノギクを見に行った。今回で4年目だが、4年前に「畑」から広がり礫河原で群落をなしていた一帯はセンダングサが猛烈に繁茂する所と化した。「畑」の周囲もセンダングサに囲まれて近づけない。そのことは良いことかもしれない。
 水辺に近い礫河原はこの夏の増水で冠水し白く汚れ砂礫が詰まっている。となると、多摩川では絶滅したカワラハハコの生存が心配になるが、幸い場所は少し移動したが、去年よりも見栄えのする大群落を形成していた。カワラノギクとカワラハハコが一緒に生えている贅沢な所もいくつかある。礫河原まで車輌を乗り入れて来たカメラマン?がいた。
 昨年は上流部に延びる車道を進んだら行き止まりとなったので今回は下流方向に進んだ。「畑」から200mほど下流にもカワラノギクが来ていて、仮に「畑」が駄目になってもかなり周囲に広がっているのであと10年ぐらいは生育していると思われる。(写真1枚目はユウガギク)

11月5日 羽村堰上の多摩川両岸
 羽村堰上流左岸の礫河原に地元の人が播種してのち毎年自然に育っているカワラノギクの群落があり、今年も去年とほぼ同程度の規模で開花した。4年ほど前はもっと水辺のほうまで広く分布していたが、他の地区同様に細粒土砂が堆積して他の草が繁茂した。
 現在群落があるところから上流部は小石程度の礫が大量にあるため他の草もあまり生えず、カワラノギク、カワラニガナ、ヤハズソウなどが棲息しやすい。カワラニガナは4月末から11月まで花が見られるので環境さえ良ければ充分繁茂しうる。その環境がないのが多摩川の実状だが。モズがあちこちで鳴いている。クズやアレチウリで造られるオブジェが美事。
 工事中の堰下橋を渡って右岸へ。最後の一本のカワラノギクも今年は見られなかった。
 カワウ、カルガモ、オオバン、モズ、スズメ、ガビチョウ。

11月3日 友田の多摩川右岸と小作堰下流中州
 小雨か曇天という天気予報ながら晴の特異日通り快晴となる。
 カワラノギクを見にまずは唯一の自生地友田へ。今夏は藪が猛烈で、径を失いがちながら現地へ。藪の中にカワラノギクの開花株が20、ロゼット20、ミックス2株あった。今年は永田地区もそうだが、成長が悪いながらの可憐な花が多い。センダングサの繁茂が凄まじいが、まだ剥がれて衣服に付く種子は少ない。引き続き小作堰に行き、ズック靴に履きかえ徒渉。水深は膝辺り。濡れたズック靴のまま、意地か子どもの時からの凝り性ゆえか、何をすきこのんでと自問しつつブタクサとオギとカナムグラとクズが猛烈に繁茂する藪に突進、腰までの藪を漕ぎつつ格闘30分、目印の所にたどり着く。あった! クズに表面を覆われ地表が見えない中にカワラノギクが点々と合計10株咲いていた。藪と戦って開花にたどり着いた強者ゆえか、ここのカワラノギクは茎がしっかりしており、花も多く色も少し濃い。苦労した甲斐があった。しかし、前述のように地表はまったく見えないので、来年ここでまたカワラノギクが見られるかははなはだ心許ない。帰路も猛烈な藪こぎと徒渉の末ようやく小作堰護岸へ。靴を履きかえる際に気づいたが、なんとズック靴のゴム底が両脚ともなかった。どうりで足裏が痛いわけだ。20年ほど前に買った靴なので水に浸かってふやけ底が剥げたのだろう。でも無事に帰路につけて良かった。

10月30日 永田地区の多摩川右岸
 カワラノギク・プロジェクト。京浜河川事務所、福生市、明治大学農学部、そして市民の協働作業として今日は開花個体数調査。25mのメッシュで直径4m内のカワラノギクの開花個体とロゼットの数を参加者30数名で調査。
 今年は見た目からして開花個体数が少ない。調査の結果、開花個体231、ロゼット2347。地区全体数は推計で開花11000、ロゼット115000。昨年の開花個体数推計が27000だったので見た目開花個体が少ないという感覚は間違っていないようだ。水辺の礫河原にはカワラバッタやカワラニガナが見られた。
 解散後、永田橋下流右岸を調査、橋のすぐ近くに開花個体2株あった。途中まで行きカワラケツメイ約200株を確認、その少し先で藪が濃くなったので引き換えしたが、その先まで調査した明治大学によるとカワラノギクが数株あった由。帰路、永田橋脇の交差点の歩道と車道の境界になんとカワラノギクが1株開花していた。
 先週まだ気温27度の日があったが今日の最高気温は16度ぐらいだそうで、そのせいかジョウビタキが飛来し鳴いていた。

10月23日 関戸橋周辺の多摩川
 関戸橋架替工事に伴い瀬替え等で大きく削られる予定の中州に播種によるカワラノギクが生き残っており、施工者の東京都が今春安全地帯で種子植え付けとロゼット移植を行いかなり良い成功率だったが、8月下旬の増水で冠水。その後の様子を見に行った。低水敷が大きく洗われ、カワラノギクはみごとに流失した。冠水しても多少は生き残ることが多いが、誰かが意図的に摘み取ったのではないかと思えるほど1株もない。
 下流部にある実生3株のみ蕾をつけて生き残っていた。付近にカワラケツメイ約20株、カナビキソウ、カワラニガナ等もわずかに残っているが、ここは仮設橋が架かるかその工事用道路になるため潰される。関戸橋下流の礫河原にある同じく播種されて生き残っていたカワラノギクも全滅した。これで、関戸橋周辺のカワラノギクは上述の3株と地元市民が造っている花壇だけになった。

10月16日 海老取川から新整備場駅までの多摩川左岸
 定例自然観察会。天空橋駅で下車し地上に出るが、自分がどこにいるかわからない。川はどっちだ?周囲は空き地で前方に飛行機が見える。帰路、この飛行機がいたのは国際線の滑走路だとわかる。
 河口で調査・観察をしている会員のUさんの案内でようやく海老取川とお馴染みの鳥居が見えて自分の居場所がわかった。潮が引きアサリ採りの人が干潟に点々と見られ、最も先端は空港滑走路地先付近まで。
 シギ・チドリはほとんどおらず、カルガモとアオサギ、ダイサギ、ウミネコ、背黒カモメがかろうじて見られただけ。ヤマトオサガニが食餌中。開花中のハチジョウナが数株。
 長距離の無粋な護岸建設中。他は特筆すべきことなし。空港敷地でこれ以上先へ進めないという地点から車道脇の歩道を進みトンネル700mを抜けた所で倉庫群で陸橋を渡って突き当たりに新整備上のモノレール駅があった。飛行機が間近に見られた。
 帰りはモノレールに乗り、高い所からいま歩いて来た多摩川河口を眺めた。