多摩川の自然のニュース:2007年(1月〜8月)

新しい日付順に配列してあります。水色は多摩川水系桃色は他の川等緑は会議等です。
下線を敷いた件については画像があります。画像は重いので質を落としてあります。
画像は約4ヶ月で更新します。

9月以降

8月17日 拝島橋周辺の多摩川左岸 曇りでも猛暑
 曇っていても陽が射せば真夏だし、そもそも湿度が高いので汗が流れ落ちる。拝島橋左岸上流のコゴメヤナギ群落は無事だったが、周囲の「野鳥観察広場」(開設当初の名前。いまは何と言うか不明)は蒸し暑いただの芝地。バーベキュー場が暑苦しく並ぶ。ニワウルシが枝いっぱいに実をつけていた。葉にはアブラゼミやツクツクホウシの脱け殻が軒並み着いている。
 水辺に行こうと思ったら、低水護岸下に大きな池があって(むかしからあったが、前は池と池のあいだが通れた)通行不能。ヒメガマなどが穂をつけていた。下流には下水が流れ込んでいて渡れないので、上流へ大きく迂回すれば水辺に行けるかも知れないが、猛暑なので今日はやめた。
 拝島橋の下をくぐって河川敷に広がる林を抜ける遊歩道に入ると、まずいきなり何だこれは?という無駄な公共工事の典型のようなものがある。かつては木が生えていたような気がするが、忘れた。木が数本植えられているが、いずれも枯れている。林のすぐ脇にマンションが聳え、その下流はむかしはずっと畑が続いていたが(そのなごりで、林の中に芭蕉の木が伸びている)、いまは川側は林が続き、左の住宅地側は、いま問題の墓地が建設されそうになっているところ。言うまでもなくここは河川敷のなかであり、建設省(現在国土交通省)の河川区域を示す杭が並んでいる。かつてここに砂利鉄道が走っていた。墓地予定地は私有地だが、河川区域内であることは事実であり、国はあくまでも河川環境の維持に努めるべきであると思う。(河川敷内墓地反対の団体のHPを参照)
 暑くて、野鳥は見あたらなかった。蝉の鳴き声だけが一帯に染み渡っていた。

8月13日 多摩川橋・小作堰周辺 快晴、猛暑
 圏央道橋下流右岸の丸石河原はときどき大きさを変えるが、今日はずいぶんと狭く見える。野外料理をする若者と家族連れが5組ほど来て賑わっている。上流の青梅市営運動場付近は百名以上の水遊び客で海水浴場なみ。
 林の下ではヤブランがあちこちで咲いている。右岸はツルヨシがますます広がっている。いまや唯一手つかずの自生地のカワラノギクは、猛暑にあえぎながらも無事に育っている。今春は新芽が少なく、枯れる株があまりないためもあるだろう。カワラニガナの方が疲れ気味だった。クサギがここでも満開。キササゲは実をぶらさげている。ノコンギクがいくつか咲いている。まだ秋ではないので花の色は白いが、アレチマツヨイグサがいくつか紅葉していた。カワラハハコがなんとか生きのびていて嬉しい。
 小作堰上流は水を湛えて気持ちが良い。下流は釣り人が数人。排水溝下に木道があるが、羽用水に架かっていた木道は流失したままで、中州には入れない。中州の周囲に新たに砂利が溜まり、草が生えていて、中州が直接水流に洗われる状態ではなくなった。猛暑のせいか、ウグイスとシジュウカラの声を聞いただけだった。

8月12日 羽村大橋から永田橋までの多摩川右岸 晴ときどき曇りだが猛暑
 羽村大橋にさしかかると甘いにおい。見下ろすと、玉川上水に大きなクサギの木が覆い被さり、満開。多摩川の流れに真ん中に積み上げた砂利が前回の増水で削られたことは以前書いたが、その後の変化はなく、砂利山の頂上に草が生えている。右岸水辺の伏流水による小さな池は浮き草か何かが一面に覆って真っ青
 万願寺地先の河原が旱魃状態だったので、羽村のカワラノギクが心配になって見に来た。ニセアカシア林の中に生えるブタクサも水不足で頭を垂れている。草むらに混じって生えているカワラナデシコが元気に花をつけていたが、カワラノギク自生地では野芝がすっかり干上がっており、カワラノギクのロゼットも枯死寸前。耕作地の大きな株はまだ元気だが、芝地に生えた自生のロゼットも白くなりかけている。7月の調査で消滅寸前だった播種地にロゼットは見あたらない。一昨年耕作した箇所はカワラヨモギばかりが元気で、カワラノギクは疲れ気味
 ここから永田の実験地への林の中に誰かがタネを撒いたところの株は皮肉なことにみんな元気だ。
 永田地区は草ぼうぼうで、そっちがむしろ心配だが、草のおかげかどうか、カワラノギクはさほど弱っていない。草が少ないところで少し干上がり気味だが、こうなる前にある程度成長していたのでまだ数日は持ちこたえられそうな気配だ。A工区下流部は除草したために草丈が低く、カワラノギクもそこそこ元気に育っている。少し疲れ気味の群落もある。カワラハハコはすっかり枯死状態。自生地でも実験地でも妙に元気なのがカワラヨモギで、葉が青々としている。
 D工区の水辺の丸石河原には丈の低いロゼットがたくさん生えており、日照りが強く干上がっていないかと心配だったが、こちらは意外とみんな元気だった。丸石河原とはいえ、水辺が近いので、砂利の下に十分に水分が来ているのかもしれない。キクイモの花がぼちぼち咲き始めた。
 コサギ、ホオジロ、オナガ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

8月10日 万願寺地先の多摩川 快晴、猛暑
 駅を出た瞬間頭が朦朧としてくる暑さ。
 堤防の草刈りが終わっている。在来植生調査のため除草調整してもらっている区域では、ワレモコウやクサボケ、レンリソウなどがふたたび芽を伸ばし、スズサイコが6株実をつけていたツルボも咲き始めている。ツリガネニンジンは除草とのタイミングが合わず、刈られてしまい花は1つも見られない。
 池のまわりでは、ガガイモや甘い香りを放つクサギの花が咲き、ノブドウの実がたくさんついている。水中からミクリの実がたくさん出ている。
 炎天下から林に入ってしばし涼んで出ると不法ゴルフ場。さすがにこの時間はゴルファーもラジコン操縦士もいないが、土手際ではいつものドラマーが太鼓を叩いていた。ゴルフ場に焼け跡があり、たぶん花火でもしたのだろう。去年はそれが野火となって付近一帯が焼かれた。アレチマツヨイグサの花が咲く草原を歩く。夏空がまぶしい。
 水際では、播種したカワラケツメイが66株生き残っている。それにしても死にそうに暑いのは、人間だけではなく、さすがの河原植物も焼けただれており、カワラノギクのロゼットも枯死寸前。今夏は例年以上と期待されたカワラナデシコも枯れたり蕾が焼けていたりで、花は一つも咲いていない。今年は逆に全滅かもしれない。クズの花が咲き始めた。汗だくで堤防まで戻ると、グラウンドでは少年たちがサッカーの練習をしていた。若い!
 ツクツクボウシ、ミンミンゼミ、アブラゼミが鳴いている。キリギリスも、数は減ったがまだ演奏を続けていた。
 コサギ、アオサギ、トビ、ツバメ、イワツバメ、メジロ、ホオジロ、スズメ、ハシブトガラス。

8月6日 小田急線鉄橋から狛江水辺の楽校までの多摩川左岸 猛暑
 うだるような暑さとはこのこと。でも、風があるので川にいる間は汗は出ない。河川敷の広場にある大きなコゴメヤナギの下に人が大勢休んでいたので、一緒に一服しようと思ったら、そこでみんなバーベキューをして臭い油の匂いを辺りに漂わせていたので退散した。毎日こういうことが続くと、木も枯れるだろう。水辺で大きな柳の木が倒れていた。根元を増水で洗われたらしい。
 二ヶ領用水堰は水を湛えている。回転堰から広い石畳が続き、コサギやダイサギが獲物を狙っている。上空ではイワツバメがたくさん舞っていた。府中から広がったコゴメバオトギリがここまで侵出している。堰下流の水辺に出ると、土丹が顕れているが、むかしに比べるとずいぶん小さくなった。アシ原が広がっている。下流は増水で汚れた丸石河原。投網を打っている人がいた。
 狛江の水辺の楽校に裏から入る。踏み跡がよくついていて、大勢の人に利用されていることがうかがえる。小さな池や木橋などを経て木陰の中の広場にでる。堤防に上がると、また猛暑が襲ってきた。
 暑さのせいか、野鳥が少ない。カワウ、コサギ、ダイサギ、ウミネコ、イワツバメ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラスぐらい。

8月4日 百草床止から大栗川合流点までの多摩川右岸 快晴、猛暑
 運動不足を補うため、猛暑の中を多摩川へ。水辺のカルガモは涼しそうだ。京王線鉄橋下で泳いでいる中学生がいた。程久保川のワンドは、川の水位が下がって水が入らない状態が数年続いている。浅川合流点に大きな中州ができているが、今秋、南武線鉄橋補強工事に使用するためここの土砂を掘る計画がある。府中四谷橋下流は左岸の低水敷を削ったため浅瀬が広がっている。不法ゴルフ場が見える。
 右岸は、7日に予定されている花火大会のため一斉に除草され、水辺はフェンスが張られている。左岸の水辺でブルが土を掘り返している。この辺は、数年前に護岸工事が続き高水敷が整備されたために水辺で遊ぶことがまったくできなくなった。ヨーロッパの川のように岸から川へは急な崖で水に近づけない。増水のたびにいっそう崖が嶮しくなる。わずかに生える植物はアレチウリに覆われつつある。アレチウリの一斉調査を今年もやるようだが、堤防からの調査だけではなく水辺も調査しないと実態から離れてしまうだろう。高水敷は花火用にすっかり除草されたが、残っている所は外来植物が一面に広がっている。
 それにしても猛暑の炎天下、バーベキューをしたり野球をしたり、元気な人たちが大勢いるものだ。
 関戸橋下流の草むらでキリギリスが数匹鳴いていた。
 カワウ、ダイサギ、コサギ、カルガモ、イワツバメ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、セッカ、スズメ、ハシブトガラス。

8月2日 中央線鉄橋から立日橋までの多摩川右岸 快晴、風強い
 夏の日射しだが、台風の影響で風が強く、汗は出ない。鉄橋下で中学生たちが数人水遊びをしている。堤防のり面でカラマツソウが花を咲かせていたが、風が強くて写真が撮れない。立日橋直下に湿地があり、きっとおもしろい植物が生えるだろうと去年期待したが、サンカクイ以外にめぼしいものは見つからなかった。今年はどうかと期待したが、やや干上がり気味で、湿地は去年より小さい。そこから少し離れた小さな水溜まりでコガマが穂をつけていた。橋直下の水辺にわずかに広がる丸石河原に立派なカワラニガナが4株あった。蕾や種をたくさんつけており、これだけ大きな株ならいずれ付近に広がって群落を形成すると期待できる。
 大きなエノキの木陰で一息つけてから日野駅へ戻る。途中で、水路があり、色鯉が泳いでいた。昆虫博士の須田孫七先生に言わせれば、最近流行の学校ビオトープは露天風呂にしか見えないそうだが、ここも整備されすぎてただの公園みたいだ。ただし、フェンスの中は大きな森になっており、「自然体験広場」と名づけられている。園内で大きなニワウルシの木がたくさん花とタネをつけていた。リョウブの花はそろそろ終わり。街路のトチの木も緑さわやかだ。ダイサギ、コサギ、セッカ、スズメ。

7月28〜29日 大菩薩嶺 28日は晴、29日は曇り
 毎年夏の恒例行事、多摩川水源合宿、今年は初めて大菩薩嶺に行った。ただし、日程と体力の関係で、多摩川水系の沢を見ることはできず、富士川水系が主とした。
 塩山駅から市バスで裂石の登山口までひたすら登りの約20分、料金はたったの100円。近くにできた「大菩薩の湯」送迎バスという機能を果たすためと察せられるが、フェアトレードの時代、きちんとした労働対価は要求すべきだと思う。
 暑くなりそうな炎天下、健脚組9名は10時45分に出発、まず車道を登りママコナヤマハギなどの花を見て気分を紛らせつつ山道へ。千石茶屋でS家一行と合流、本格的な山登りに入る。ウグイスの声がとくに多い。登るにつれてキビタキの声も聞こえてきた。途中で昼食をとり、13時30分に上日川峠に着く。樹林の中を登ってきたせいか、峠の炎天下の方が暑くてまいったが、雲が出て来たこともあり落ち着くとやはり山の上は涼しい。タクシーでここまで来たゆったり組と合わせ、14時に参加者全員が集合した。
 峠周辺の駐車場は、夏休み最初の土曜日ということもあって、マイカーやマイクロバス、オートバイなどで賑わい、観光地。ただし、夕方にはほとんどが下山して、峠にあるロッヂ長兵衛は静かな山の宿に戻った。疲れた身体で飲む生ビールはことのほか旨く、また手作りの山菜料理はどれもおいしく全員完食、宿の主人を喜ばせた。宿泊客は桃が食べ放題とのことで、甘くておいしい桃を一人でいくつも食べた人もいた。
 ところで、肝心の自然観察は――
 上日川峠から大菩薩湖が眺められる展望台まで1キロ強の木道がウラジロモミ林の中に続いている。身障者用と察せられるが、両側柵付きのこんな立派な木道が必要かと疑われる。展望台も林を無理に切り開いて造られたと思われる。ロックフィルダムが見下ろせるが、ここは富士山の展望のために造られたらしい。開かれたところにヒヨドリバナがたくさん咲いていた。大きなナツツバキの木があって花をたくさん咲かせていた。笹の葉から頭を出したトンボソウと思われる野生ランが1本。
 雲に覆われ富士山は見えなかった。峠の駐車場からは大菩薩嶺の稜線が見えた。夕方散歩がてら林の中につけられた自然の道を歩くとシカが4頭ピィと警戒音を鳴らしながら斜面を登っていった。アカハラばかりがよく囀っている。夜の観察では最初に夏の大三角形≠フ星や北斗七星など主だった星が眺められたが、21時頃には曇ってしまった。代わりに、小さな身体ながら強い光を放つサトボタルが飛んでいた。たとえ1匹でも光が舞う光景は幻想的だ。
 翌朝4時に起床、何も鳴いていない。4時半頃にようやくアカハラとホトトギスの声。その後、コガラとキビタキが鳴き始めるが、季節のせいか環境のせいか、野鳥の種類が少ない。林の中の道を下ると、親子のシカが笹を食べていた。しばらく互いに様子をさぐりあっていたが、近づくとさすがに逃げていって、朝食の邪魔をして申し訳ない気もした。〔このときのシカの写真は矢島悠子さんのホームページに掲載されている。〕
 朝食後、7時に峠を目指して歩き始め、高度が上がるにつれてコマドリやミソサザイ、ヒガラ、メボソムシクイ、ルリビタキ、ビンズイなどの囀りが聞こえるようになった。7時半福ちゃん荘着、この辺は観光地っぽい。8時半大菩薩峠到着。介山荘改築の工事音がうるさいが、稜線歩きはやはり気持ちが良い。下に湖が見えるが、曇って遠望はきかない。頂上方面は霧が立ち始めている。ウスユキソウコウリンカニョホウチドリ、シモツケ、キンレイカ、マルバタケブキなどの花を楽しみつつ、大菩薩嶺へ。9時25分頂上着。樹林に覆われて遠望はできない。標高2057m。ここで唐松尾根を下るゆったり組と丸川峠に下る健脚組に分かれる。10時5分出発。
 丸川峠まではギンリョウソウをいくつも見ながらの林の中の道だが、意外と長い。11時25分丸川峠着。これだけ下ってもまだ半分という峠から空が暗くなり、いまにも雨が降り出しそう。カキツバタの花が1本静かに咲いている。しかも文字通りの急坂で、空腹も加わって子どもたちはややばて気味。膝ががくがくになるころようやくみそぎ沢に出て、13時20分、無事に山行は終わった。しかし、ふたたびの炎天下の車道歩きはつらい。集落に着いたらさっそくガビチョウが出迎えた。
 アオバト、ホトトギス、アマツバメ、イワツバメ、ビンズイ、ミソサザイ、コマドリ、ルリビタキ、アカハラ、ヤブサメ、ウグイス、キビタキ、オオルリ、コガラ、ヒガラ、シジュウカラ、ホオジロ、ウソ、ガビチョウ。
 おまけ2つ。
 (1)ロッヂの庭でヂガバチが青虫を捕まえ引きずってきて、予め用意された穴に引き入れて、小石をつめて蓋をした。
 (2)30年前から山梨県内の山のあちこちに張られているゴミ捨て禁止の看板、字を間違えられては熊も熊っているのに、いっこうに直して架け替えようとしないのは困ったものだ。

7月25日 万願寺地先の多摩川 晴、暑いが風あり
 夏休みで少年サッカー試合中。ゴール目指したボールが外れてボールがそばに転がってきたので投げ返してやったが、選手からも監督や審判からも何の挨拶もない。御礼を求めるわけではないが、親も含めて50名近くいるのに無粋な人たちだ。
 シナダレスズメガヤが道いっぱいに繁茂している。ちょっとはずれた広場ではカワラナデシコが今年も順調に生育している。カワラサイコとコマツナギはまだ満開。キリギリスがさかんに鳴いている。日野の市民が育てているカワラノギクは、今年開花しそうな株が6、ロゼットが15あった。その近くの崖にカワラケツメイが5株自生している。近寄ると、キジの雌雄とカルガモの雌雄が草むらから飛び出した。
 高水敷はクズで覆われた。緩傾斜の水際ではアレチマツヨイグサが大群落を形成していた。上流側に播種したカワラケツメイはクズに負けそうだったので、クズを除去した。カワラケツメイは30株が育っていた。下流にある自生地では、草むらに140株、崖の上流側に170株、下流側に360株生えていて、当面の絶滅は免れそうだ。
 不法ゴルフ場がまた拡張された。その近くに異常と言うしかないオニユリの群落があった。50株以上が花を咲かせていた。誰かが植えたのだろうか。オギ原の中に?堤防では植生調査地の除草が終わり、ワレモコウが伸びていた。除草していないところではツリガネニンジンが伸びてきた。
 ニイニイゼミ、アブラゼミ、ミンミンゼミが鳴いていて、夏を感じさせる。
 ダイサギ、コサギ、アオサギ、カルガモ、キジ、ツバメ、セッカ、ホオジロ、スズメ、ハシブトガラス。

7月21日 京王多摩川から調布のワンドまでの多摩川左岸 曇り、晴れ間あり
 多摩川ツバメの集団ねぐら一斉調査日。雨との天気予報ははずれて、晴れ間が見え、月がくっきりと見えた。
 上河原堰上流の中州でこの4年間調査をしてきたので、アシがほとんどなくなったが、今年もこの場所を調査することにした。かつて600羽ほどが犇めいた小さなアシの中州はいまアシがわずかしか残っておらずほとんどがオギとヤナギになっている。堰のすぐ近くにも小さなアシの群落があるが、今日は大学生が20人ほどBQをしていてうるさそうだったので、そこは断念した。
 18時55分頃に小さな中州の最上流端付近をツバメが舞っており、つぎつぎと上流からツバメが飛んでくる。その数約200羽。辺りを見渡すと、中央の大きな中州でも、上流の細長い中州でもツバメが舞っているから、推定では500羽ほど来ているかもしれない。近くの小さな中州のアシに止まって休んでいるツバメは60羽ほど。遠くや中州の裏側は見えない。19時20分ごろ終了。ツバメが休んでいる所は、堤内地のグラウンドの照明に照らされて双眼鏡でのぞくとまだ見える。
 話しが変わるが、近所に住んで3年前から野鳥を観察しているという婦人の話では、今年は多摩川原橋上流でコアジサシが営巣して雛がかえったとか。
 上河原堰にアオサギ10羽、ダイサギ2羽、コサギ10羽、ゴイサギ5羽(上記婦人の話では25羽いたとか)、カルガモ30羽、上空の高圧線にカワウが56羽。その他、カイツブリ、セッカ、モズ、スズメ、ハシブトガラス。
 上河原堰取附部工事のため移動を余儀なくされたクララの保護地の周囲がきれいに除草されており、アレチウリなどに覆われないようにしてくれて良かったが、囲いの中は草ぼうぼうでクララが埋没していたので、「植生調査中」との看板を無視して勝手に除草した。というのも私たちの認識ではここで雑草繁茂実験をしているのではなくクララの救出作戦を展開中のはずだから。
 近くでキリギリスが鳴いていた。
 上河原堰下流の堤防沿いは新築ラッシュで、最近建てられた家が並んでいる。スーパー堤防になっているので、家が堤防と同じ高さで壁のようだ。

7月19日 羽村大橋から永田橋までの多摩川右岸 曇り
 先日の台風による増水で、羽村大橋直下の川中に堆積された砂利が半分以上流出していた。この砂利が付近の川底に溜まることが期待されているようだが、素人が観察している限りでは五日市線鉄橋付近まで流下しているように見える。それで良いのだろうか。大きなネムノキで花がたくさん咲いているのが橋の上から良く見える。HL住居がまた増えた。蜜蜂を飼う箱が並んでいた。いまごろは何の蜜を集めるのだろう。
 カワラノギク自生地の草も伸びているが、今年播種したものも、中央の耕作地でとくにたくさん成長している。下流方面と上流方面の草地に播種した株の生育は良くない。周辺に自然に広がった株は元気に成長している。
 永田実験区は、今春、この2年間手が回らなかったA工区下流部を中心に除草したおかげで下流方面は良い感じだが、その代わり今度は上流部でタケニグサやススキ、イタドリなどの繁茂がすさまじい。9月はどうするか、戦略会議が必要だ。B工区の背丈ほどあるブッシュの中にもカワラノギクがたくさん生えて成長している。意外と強い草だ。
 カワラヨモギは元気に成長し、さらに増えつつある。カワラハハコは花がいくつかついているものの瀕死状態。B工区下流の水辺の丸石河原は増水で水をかぶっているが、カワラノギクの小さなロゼットがみんな生き残っていた。C工区以下は無数と言って良いほどたくさん芽生えていて、これがどんどん下流に広がって行くと良いのだが、永田橋と多摩橋の間に丸石河原はほとんどないのでそれは難しそうだ。
 土手のキスゲSPが15本ほど咲いていた。堤防を除草した際にこれだけ残してくれたようで、何より。
 カワウ、コゲラ、ヒヨドリ、モズ、ホオジロ、ガビチョウ。

7月15日 中央線鉄橋右岸 小雨
 最大級の台風4号の影響で梅雨前線が活発化し、雨が降っているが、京浜河川事務所提供のライブカメラ情報では多摩川はさして増水していない。昼過ぎに晴れそうになったので、さっそく中央線鉄橋下の多摩川へ様子を見に行った。新しい高水敷のおかげで右岸の民家の危険はかなり遠のいた。増水し、すごい勢いで水は流れているが、2001年9月の増水と比べたら大したことはない。鉄橋上流の用水吐き出し口付近で調査か遊びか若い男女が四つ手網で何か取っていた。
 谷地川との合流点でツバメが60羽ほど集団で舞っていた。暗くなったので、夕方と間違えて集団ねぐら入りしようとしているのかもしれない。

7月9日 京王多摩川から狛江五本松までの多摩川左岸 曇り
 京王多摩川の河原はグラウンドが広がるが、武蔵野の路のサイクリングロートと平行して工事用道路が続いている。おそらく災害時緊急道路予定地だと思われるが、ここは堤防上も広く、無駄な公共工事だと思う。
 消防署が、小型ボートを使って水防訓練をしていた。この辺は深いので危険だ。上河原堰上流の中州は少し小さくなった気がする。ツバメの集団ねぐらが見られた中州は、ヨシがほとんどなくなりオギばかりとなったので、去年同様、今年もねぐらにならないかもしれない。
 上河原堰取附部改築工事にともない、30年以上生き存えてきたクララが掘り潰される危険があるため、昨年、京浜河川事務所に依頼して暫定的に移植してもらった。秋で表面的にはその存在が不明だったが、上手に根を掘り出してくれて、6月になって無事に花を咲かせたという連絡が地域連携係長からあったので、さっそく見に行った。改築工事は終了間際で、堤防の芝に水遣りをしていた。工事用道路周辺が殺伐としているが、いずれ草が生えるだろう。一段高くなった堤防のり面にカワラサイコが群落をなしている。府中地先に多い外来種のコゴメバオトギリの侵出が気になる。
 さて、クララは無事に保護区の中で成長し、高さ50p以上、10株以上あり、実をたくさんつけていた。ここからまた周辺に広がって行くことを期待したい。
 付近にアレチウリその他の植物が迫っているため、京浜河川事務所から、その場合は「かわらき水辺の楽校」に移植したいという提案があったが、それには反対した。あんな遠くに移したら園芸植物と同じ感覚になり、何のために労力をかけてここで保護したかわからなくなる。担当係長も理解してくれて、周辺での群落復元に努めることとした。
 その上流の河川敷は、かつて私有地でゴルフ練習場が造られる寸前で廃止に成功したところだが、その後調布市が買い取ってくれたのは良かったものの、結局つまらない公園にしただけだった。いま、広大な敷地で除草が行われている。花火に使うのかもしれないが、今年の花火は9月だという話もあるので、ただの公園維持のためかもしれない。そこから下流、私有地の畑に隣接するところで重機が河川敷を掘り返していた。
 調布五本松周辺の河川敷内の畑は相変わらずすごい。多摩川住宅付近の堤内地側堤防のり面は指定外来種のキンケイギクが広がりつつある。
 多摩川住宅付近の堤防桜並木でニイニイゼミが鳴いていた。夏だ。
 カイツブリ、カワウ、コサギ、バン、カルガモ、セグロセキレイ、オオヨシキリ、セッカ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス。

6月23日 万願寺地先の多摩川 快晴、真夏日
 府中本宿堰が床止に代わったためか上流部の池が消滅した。下流の池もいずれ伏流水減少で涸れるかもしれない。シナダレスズメガヤが繁茂しているが、カワラサイコが必死に居残って花をたくさん咲かせている。カワラナデシコはこの夏たくさん開花するかもしれない。カワラノギクも無事だ。カワラケツメイの成長が遅れている。去年播種して開花・結実したものが周囲でいくつか芽吹いている。今年播いたものは発芽率が低い。自生地は今年激減している。カワラサイコとコマツナギ、テリハノイバラがあちこちで満開。外来種のコゴメバオトギリは意外と増えないで助かっている。代わりにオオキンケイギクが水辺でたくさん咲いている。水辺付近は麦科植物の秋だ。日陰でハグロトンボが舞っている。カジカガエルの声が聞こえる。キリギリスも鳴き始めた。ヌルデ林が夏を感じさせる。
 堤防のり面は草が繁茂してきた。植生調査地区もそろそろ除草が必要になった。
 ラジコン飛行機が数機上空を舞い、ゴルファーが思いきり球を飛ばしていて、危なくて近寄れない。ここもいずれ淀川のようになりかねない。
 アオサギ、イカルチドリ、トビ、ツバメ、ヒヨドリ、ウグイス、セッカ、ホオジロ、カワラヒワ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

6月17日 睦橋前後右岸 快晴、夏の強い日差し、日陰は涼しい
 福生南公園入口付近はブタナのお花畑。拝島駅から来る途中の民家にブタナそっくりの花と花茎が伸びたウズラバタンポポが咲いていた。川を渡る。風が気持ちよい。下流側を見下ろすと、水辺に草が茂り、しかも堀のようになっている。こうして次第に深掘れして、河川敷が相対的に高くなり樹林化するのだろうか。実際に河原の真ん中はニセアカシアの林だし、橋の上流右岸はすでに林になっている。
 上流側に池が10ほど点在するが、キショウブやヒメガマの大群落があり、ミクリも見られるが、網で掬ってもヌマエビや小魚等がまったく捕れない。アメリカザリガニとタニシが捕れただけ。ブラックバスの魚影が見え、少し上流の池でブラックバスと思われる稚魚が捕れた。もしかしたら他の生き物はこの餌になったかもしれない。
 背丈の低いヌルデの林が続き、足元にカワラサイコを見る。テリハノイバラが咲いている。モノサシトンボやウラゴマダラシジミが飛んでいる。土手沿いは野球等をする人の車が連なり暑苦しい。堤防は草刈りが終わったばかりでネジバナなども何もない。
 多摩川の水辺に出る。丸石河原が一面に広がっていた河原はいま草ぼうぼう。ちょっと開けた所にはオオキンケイギクやマツバギク、ムシトリナデシコなどの外来植物が点々を咲いている。キササゲの若木もたくさんある。カワラニガナがやっと一株。多摩川に網を差し込むと、シマドジョウの稚魚やサナエトンボ、ハグロトンボなどのヤゴ、スジエビが捕れた。
 ニセアカシア林の道を行くと、ハグロトンボがあちこちからヒラヒラと飛んでくる。カワラヒワがビイーンと囀っている。ガビチョウが近くで鳴く。ようやく睦橋まで戻り、昼食後、下流へ。カワラニガナの大群落が続く。ネムノキが一輪咲いていた。秋川との合流点はオギが繁り、水も深くて近付けずけなかった。左岸では泳いでいる子どもやバーベキューを楽しむ家族連れやグループなどで賑わっていた。睦橋下の川の中では60p以上はある大きな白い鯉がゆったりと泳いでいた。
 カワウ、カルガモ、イカルチドリ。トビ、キジバト、コゲラ、ツバメ、イワツバメ、キセキレイ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、ウグイス、セッカ、シジュウカラ、エナガ、ホオジロ、カワラヒワ、スズメ、ムクドリ、オナガ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

6月9日 永田地区 曇りのち雨
 カワラノギクプロジェクト。今年2度目の公募除草。新規参加者7名を含む約40名の参加を得て、永田地区A工区の選択的除草を行った。広い工区にはまだイタドリやススキなどの群落があちこちに点在する。今年は猛暑でないのが幸いだ。しかし天気予報の通り11時半頃には雨が本降りとなって途中で中止とせざるをえなかった。それでも終わってみればそれなりにきれいになっていた。
 カワウ、イカルチドリ、トビ、イワツバメ、ヒヨドリ、ウグイス、ホオジロ、スズメ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

6月5日 多摩橋から下奥多摩橋までの右岸 晴のち曇り 暑いが陰ると涼しい
 多摩橋上流の人道橋から上流を見ると、多摩川の流れと大岳山ほか奥多摩の山々が眺められた。過去形である。現在は圏央道橋が眺望を塞いでいる。川の上流右手は崖で樹木が茂っていた。過去形である。現在は崖の上に住宅が建って木が切られてしまった。一風変わった住宅と思ったら、それはインテリアショップで、ベランダを開放している。机や椅子、ベンチ、犬の水桶まで用意してあり、ベランダから多摩川を見下ろせる。圏央道橋がなければ奥多摩の山々が遠望できたはずで、この近くにはかつて数軒別荘が建っていた。
 多摩川でたった二箇所になったカワラノギクの自生地は無事にあり、今年花を咲かせそうなロゼットが200株ほどあった。カワラニガナは無数にあるが、だいぶ減った。多摩川で二箇所でしか確認されていないカワラハハコがここにあるが、瀕死状態でたぶんこの夏で消滅するだろう。アレチマツヨイグサが一面に広がり、この季節に見るとちょっと芸術的だが、夏には「林」になりそうだ。ネムノキの若木がかわいい。バーベキュー跡にイタチの糞があった。匂いにつられて来たのだろうか。友田小学校の下の河川敷公園管理事務所の横に流木で造られたおもしろいオブジェがあった。斜面はブタナのお花畑。
 一旦街道に出てから川に下る。むかしは畑しかなかったところがいまは住宅街。無堤地帯ということで数年前に堤防が造られ、きれいな林が切り倒されたが、下流部でわずかに残されている。護岸工事の際のフェンスがいまだに残り、そのフェンスの向こうに階段がある。こういうのを「無駄な公共工事」と言うのだろう。
 水辺に出るとカワウ除けの案山子に驚かされる。かつて多摩川で最大のカワラニガナ群落があったここは、いまはニセアカシアとオギが一面を覆い、小さな群落でようやく75株を数えられるだけとなった。(下奥多摩橋近くにも50株弱ある。)下奥多摩橋から下流を眺めると、淵にかかる左岸の林が美しいが、少し下流にマンション群が立ち並びどう見ても異様な光景だ。
 カワウ、カルガモ、イカルチドリ、コゲラ、ツバメ、イワツバメ、ヒヨドリ、ウグイス、オオヨシキリ、シジュウカラ、メジロ、ホオジロ、カワラヒワ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

6月2日 永田地区 晴、暑いがときどきさわやかな風あり
 多摩川カワラノギクプロジェクト。今年最初の公募ボランティア参加の除草で、明治大学学生も含めて50名弱の参加があった。
 朝は涼しかったが、陽が射すとさすがに夏の太陽で暑い。しかしまた、湿度がまだ高くないので陰ったり風が吹くとさわやかだった。
 永田橋左岸に集合して永田地区の説明をしたあと、橋を渡り右岸の現地へ。研究者倉本さんの作業説明の後、初参加の人の講習を別に行うあいだにリピーターないし正規会員は作業開始。2メートル丈のイタドリを刈ったり、ピラカンサ、ススキ、イヌギクイモ、ヨモギなどをA工区最下流部付近で除草し、水辺付近を残して大方片づいた。京浜河川事務所河川環境課長ほか行政の方、関連企業の方、地元市民、本会会員、そして学生たちの協力体制のもと、さすがに大勢の参加で仕事がはかどった。
 終了後、B工区以下でのカワラノギクの生育状況を見る。近所の住民が土手に植えている園芸植物がいくつか入りこんで花を咲かせている。消滅が心配されたカワラハハコは40株と数は減ったもののまだ小群落をなしていた。さらに、ニッコウキスゲの生育状況を確認し、ノジトラノオノアザミ、ナンテンハギなどが生える土手を見に行った。
 作業に夢中になってあまり観察しなかったが、例年カッコウやホトトギスの声が近くで聞かれるのに、今年はホトトギスが遠くでちょっと聞かれただけだった。永田橋はイワツバメの巣がたくさんあるが、橋の架け替え工事が進むと、来年は巣をつくれなくなり、行く末が心配される。
 イカルチドリ、ホトトギス、イワツバメ、ヒヨドリ、ウグイス、シジュウカラ、ホオジロ、スズメ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

5月24日 万願寺地先の多摩川右岸 快晴、夏日
 除草にもかかわらずコマツヨイグサが咲き始めた。ミヤコグサもあちこちで群落をつくっている。除草調整区間のレンリソウは38株開花している。ニガナの群落もきれい。池ではキショウブが咲いている。
 浅川合流点付近の秘密の花園≠ノHLが2軒あるため除草された立派な小径があってぜんぜん秘密≠ナはなくなった。カワラナデシコの群落などが痛めつけられないことを願うのみ。ヘビイチゴが真っ赤な実をつけている。桑の実が赤くなった。マユミの花も咲き始めた。スイカズラの花が黄色くなった。
 国が東京都に貸していた街路樹圃場を廃止し更地にして返却することになり、大きく育ったケヤキやエノキなどを残してもらうべく交渉して希望が認められた地区は、その後も樹木が伐採されずに森が残っている。荒涼とした資材置き場にならずとりあえずホッとする。
 アオサギ、キジ、ツバメ、ヒヨドリ、オオヨシキリ、シジュウカラ、ホオジロ、カワラヒワ、スズメ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

5月23日 片倉
 ホトトギスの鳴き声。(以来、6月現在、毎日鳴いている。)

5月20日 奥多摩むかし道下り 快晴、のち晴 暖かく、風さわやか
 青梅線もバスも満員。むかし道で見かけた人約100人。絶好の行楽日和。奥多摩むかし道はいつも冬に歩くのでこの季節は初めて。
 水根から車道を上り始めるとすぐにマルバウツギガクウツギの花があちこちから目に飛び込み、上を見上げればハンショウヅル。遠くを見渡せばフジが満開。サワグルミその他の新緑が美しい。足元を見ればオトシブミ。そうこうしているうちに奥多摩湖が下に見下ろせる。山道をクロツグミとガビチョウの声を聞き分けつつイワタバコの若葉を見て進む。青目不動、浅間神社、中山集落を経てタツナミソウオオジシバリなどを見てダムの下へ。帰化植物のセリバヒエンソウが山の仲間でたくさん生えているのに驚く。
 以前はダムのすぐ近くまで行けたがいまは立入禁止の柵。ミズキの花を上から下から眺め、惣岳渓谷沿いの道を行く。渓谷と言い、吊り橋もかかるが、沢に岩はなく砂利ばかり。カジカガエルの鳴き声がさわやかな風に乗って聞こえてくる。
 ウツギの花に来るヒョウモンチョウやハルジオンの花に来るウスバシロチョウ、自由に舞うカラスアゲハなどに誘われつつ白髭神社へ。大きな一枚の石灰岩が神社を覆うように聳える。石灰岩特有というクモノスシダを観察。青梅街道を下に見つつ不動の滝方面への道にはいると行程の三分の一。オオバアサガラが咲きそうだ。槐木を過ぎれば奥多摩駅は遠くない。小河内ダム建設の資材を運んだトロッコ道をところどころに見つつ、線路が敷かれているトンネルまで来れば駅前の愛宕山がそびえ立ってくる。
 トビ、ノスリ、ミサゴ、イワツバメ、ヒヨドリ、クロツグミ、ミソサザイ、オオルリ、キビタキ、ウグイス、ヤマガラ、シジュウカラ、メジロ、ホオジロ、カワラヒワ、ガビチョウ。

5月17日 是政橋から読売新聞社前までの多摩川左岸 曇り、雨上がりで暑い
 13時過ぎまで土砂降りだったがその後一気に晴れ渡った。大丸用水堰はしかしさほど水量が増した感じではない。左岸魚道も待望の水が少し来た程度。
 堤防のり面植生調査対象地区での除草調整に関して、京浜河川事務所および業者と場所確認の現地立会をした。この調査も4年目に入るので、上下流はきれいに除草されていたが、対象地区だけきちんと残してあり安心した。レンリソウも無事に咲いている。多摩出張所職員によると、昨今は花粉症問題もあり、「植物と人間とどっちが大切か、早く除草しろ」という住民の声が強いとか。そういう状況の中で河川環境の維持に理解を示してくれる河川管理者に感謝したい。
 カワウ、アオサギ、ツバメ、オオヨシキリ、セッカ、シジュウカラ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス。^

5月14日 関戸橋から是政橋までの多摩川左岸 曇り、暖、風あり
 コウゾリナとハルジオンが満開。キキョウソウや園芸種のツユクサも土手に咲いている。チガヤの穂が銀色に光っている。除草調整区間でレンリソウが8株開花していた。のり面にはナワシロイチゴ(花終わり)やカワラサイコ(つぼみ)などが見られる。低水敷は、先年の改修工事以来つまらない草地でいずれオギかツルヨシに覆われるだろう。いまはサクラソウやアカバナユウゲショウなどが漂着して花を咲かせている。除草が始まっており、除草車が小段を走っていた。
 読売新聞社前の河原はラジコン飛行場になっている。そこから一段高くなったところにアリバイ的な禁止看板が立っているが効果がない。本気で取り締まるのなら、飛行場の真ん中に立てるべきだ。
 地元の小学生が植えて育てたカワラノギクは、残念ながら消滅寸前。環境は悪くないが、ロゼットが3株ようやく見られるだけになった。原因は何だろうか。
 空中でチョウゲンボウが何度もホバリングしていた。
 大丸堰の左岸魚道は相変わらず干上がったままだ。もったいない。
 カワウ、ダイサギ、コサギ、カルガモ、イカルチドリ、コアジサシ。チョウゲンボウ、キジバト、ツバメ、オオヨシキリ、セッカ、ホオジロ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス。

5月13日 万願寺地先の多摩川右岸 晴、夏日
 この地域は、人家が近くにないためか、いろんな人がやってくる。とくにラジコン飛行機愛好者約15人、サバイバルゲーマー10人、ゴルファー数人、ドラマーのほかに、今日はラジコンカーを草地の上で一人で動かしているおじさん、川中に100メートルほど石で堰を築いてラジコンボートを動かしているおじさんなどなど。団塊の世代の定年退職が増えるとこういう人たちがますます増えるのではないかと危惧される。グラウンドも大人の野球で満員だ。堤防や水辺を散策する程度で楽しめる人は増えないだろうか。
 堤防のり面のレンリソウ、今日は32株の開花が確認できた。ワレモコウもだいぶ伸びてきた。イタドリクズも伸びてきて、刈らないと全体が覆われそうだ。ミヤコグサも咲いた。高水敷はハナウドが満開、ニセアカシアの花は終わり、ノイバラとイボタノキが満開。白と青紫のニワゼキショウもたくさん咲いている。水辺はオオカワヂシャの大群落。コマツヨイグサやアカバナユウゲショウ、カキネガラシなども増え、砂地にはアリ地獄も出来ている。大水が出た時のラインに沿って草がj生えているのもおもしろい。カワラケツメイの芽生えはまだ。
 カワウ、コサギ、キジ、ツバメ、ヒヨドリ、モズ、ホオジロ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス、ガビチョウ。ラジコン飛行機のせいで(たぶん)ヒバリがいない。

5月8日 万願寺地先の多摩川右岸 快晴、夏日
 堤防のり面除草調整区間のレンリソウは12株が開花。今年は色も濃く、花もしっかりしていてきれいだ。高水敷ではハナウドが満開。ニセアカシアの花も一斉に咲いている。ホオジロがあちこちで囀り。昨年5月に大規模に不法ゴルフ場化された地域で今日も除草をしている人がいた。柵を設けても効果がないので、彼らが除去した石ころを一帯にばらまくのが一番効果的だと思う。
 キジ、ツバメ、セッカ、ホオジロ、ムクドリ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

5月5日 多摩川永田地区 快晴、夏日
 カワラノギクプロジェクトのオプション除草。今日は参加者が少なそうだったので、B工区付近の「藪」払いはやめて、少人数で達成感の得られるイタドリ除草に切り替えた。結果的に前回と同数の作業員となったが、A工区の北側半分のイタドリはほぼ取り尽くした。B工区隣接地の「藪」は手つかずで、また水際のイタドリはもはや林のようになっている。
 永田橋架け替え工事は着々と進行中。ケヤキの大木も頑張っている。
 カジカガエルが鳴いていた。
 カワウ、アオサギ、イカルチドリ、キジ、カワセミ、ウグイス、シジュウカラ、オナガ、ハシブトガラス、ガビチョウ。
 玉川上水にムギワラトンボが休んでいた。

5月2日 二ヶ領宿河原堰右岸 晴れ、暖かい
 ワンドはいつも大人の釣り堀キショウブが咲いていた。タコノアシの新芽も数本。堰下では、大きな鯉が水面からジャンプ。見ると、空中では鯉のぼりが泳いでいた。床固めではコサギ、ダイサギが餌になる魚を探し、空中ではコアジサシが3羽魚をねらって滑空していた。草地にカワラサイコが一つ葉を広げていた。
 カワウ、ダイサギ、コサギ、コアジサシ。ムクドリ、スズメ、ハシブトガラス。

4月30日 多摩川永田地区 快晴、夏日
 カワラノギクプロジェクトのオプション除草。年計画の除草では作業が間に合いそうにないので、さわやかな季節に雑草がまだ柔らかなうちに除草しようと企画した。で、まあさわやかではあったが夏日でもあった。左岸で中学生か高校生が数人水着で遊んでいた。ヨモギやイタドリはまだ抜きやすいが、ピラカンサスは小さくても棘が鋭いのでつらい。カワラヨモギの新芽が銀色に輝いていた。ヨモギの枝に小さな鳥の巣(古巣)があった。ホオジロだろうか。永田橋の工事は日々進んでいる。仮橋のところの笹林に隠れるように住んでいた住民があぶり出されたように工事現場近くで住んでいるのは痛ましい。
 カワウ、イカルチドリ。キジ、イワツバメ、シジュウカラ、モズ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

4月29日 万願寺地先の多摩川右岸 快晴、暖かい
 連休中ということもあってグラウンドや堤防付近には人出が多い。ラジコン飛行場にも10人、サバイバルゲーマーも10人強いた。石田大橋周辺は、護岸強化工事が行われている。水辺に土砂を高く積んで平気なのかと心配する。5月末には終えるのだろう。
 堤防の除草は2、3日前に終えたばかりできれいになっている。在来植生調査のため除草調整をしてもらっている箇所はきちんと残されており、今年は花が咲く可能性が高いレンリソウの株が200以上あって楽しみだ。ヘビイチゴやクサボケの花が咲き、ワレモコウやコウゾリナの若葉が伸びている。池ではキショウブが咲き始めている。下流側の除草調整地は一部イタドリが繁茂して気になるが、こちらもレンリソウがたくさん芽吹いている。ここの株はなかなか成長せず、いまのところ今年も花を咲かせそうにない。カラスノエンドウはたくさん咲いているのだが。
 高水敷ではカワラナデシコの葉が伸びていた。水辺は気持ちが良い。カワラケツメイの新芽はまだ出ていない。昨年カワラケツメイの種蒔きをした箇所の近くに今年も新たに50粒のタネを蒔いた。作業中、すぐ近くでラジコン飛行機が墜落した。ガソリンに引火したら野火になるのではないかと思う。シナダレスズメガヤが徐々に勢力を広げつつあり心配だ。日野市民が守り育てているカワラノギクはロゼットが40以上あり、周囲に少し広がっているのが嬉しい。
 カワウ、ダイサギ、コサギ、イカルチドリ。キジ、キジバト、ツバメ、ヒバリ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ツグミ、セッカ、ホオジロ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス。

4月24日 河辺地先の多摩川左岸 曇り
 曇天ながら、新緑が美しい。1月に国会議員や京浜河川事務所長も参加しての現地協議で環境整備を検討した地区の現況を見に行った。その時に合意した通りの整備にとどまり、自然を損なわずに子どもたちも安心して行ける環境整備がなされた。ニセアカシアを伐採したら、それでベンチでも造ったらと提案したら、切り株がベンチになっていた。
 心配した、在来のオドリコソウ群落は去年からゴミの不法投棄で消滅していたが、すぐ近くに50株ほど生き延び、1株だけだが花を咲かせていた。付近に目算で300株以上の群落があるが、そこは無事で満開だった。広大な丸石河原は昨年から草が茂り、カワラニガナもだいぶ減ったが、まだ多摩川最大の群落を誇っている。この大きな群落の基は、増水で全滅しかけた際に唯一残った水辺の小さな群落だったが、そこは川遊びに来る人たちによる余計な整備と遊び場化で消滅寸前となった。
 カワウ、ダイサギ、コサギ、カルガモ、キジ、ヒヨドリ、モズ、ウグイス、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

4月24日 京浜河川事務所へ
 事務所長ほか幹部交代のため、顔合わせと今年度の工事計画概要を聞きに、河川環境保全モニターで会員の森田英代さんと出かけた。所長は鈴木研司さん、副所長は堀部さんと林さん、河川環境課長に裄Vさん、工務課長菱田さんが就任した由。所長・副所長の前任地は河川ではないそうなので、できるだけ多く現地を歩いて現場でものを考えて欲しいと思った。昨今規制緩和が叫ばれているが、河川に関しては流域全体を見透したしっかりした理念のもとで一貫した行政を行って欲しい。
 面談後、河川環境課長および同課地域連携係長から今年度の河川工事計画概要の説明を受け、また今後とも情報交換を密にすることを確認しあった。

4月21日 永田地区の多摩川 晴れ、風さわやか
 カワラノギクプロジェクト2007年第3回。A工区のイタドリの除去。太い新芽は山菜に使える。折るとスポカンと音がしてスカンポそのもの。風もさわやかでこの季節の除草はとても楽だ。人数が少なかったので一部分しか除草できなかったが、それでも多少の達成感が得られるほどには片づいた
 午後は、自生地の状況を確認した。3月に蒔いたタネがたくさん発芽していた。
 永田橋架け替え工事のための仮橋建設工事が進んでいる。ねぐらにしている橋が架け替えられることを知らないイワツバメがたくさん付近を飛び交っていた。
 ジシギsp(尾羽付近のオレンジがよく見えたのでオオジシギ?)、トビ、キジ、キジバト、イワツバメ、ヒヨドリ、モズ、レンジャク、ウグイス、シジュウカラ、ホオジロ、スズメ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

3月27日 日野用水堰から谷地川までの多摩川右岸 曇り
 河岸段丘の雑木林でコブシが咲いていた。高台から見下ろすこの辺りの景色は、自然のワンドや中州があっておもしろい。アレチウリの繁茂が気になるが。オオバンやカイツブリが遊んでいた。畑の縁では人間が将棋をしていた。カワヤナギの芽生えがすがすがしい。
 八高線鉄橋付近の堤内地(都下水道局)のソメイヨシノは二分咲き程度、その下流のサトザクラの並木は満開。
 八高線鉄橋から、高水敷沿いに新しい柵が作られた。自然生態系保持空間をモトクロスやラジコン飛行機場、サバイバルゲーマーなど(この辺はメッカと言えるほど多い)から守るためと思われ、多摩大橋(工事中)の下流、八王子の下水処理水排出口、さらに谷地川まで続く。これで効果があると嬉しいが、すでに多摩大橋下流では3、4人がラジコン飛行場に集まり、もうもうと排ガスを吹き出しながらヘリコプターを操っていた。不法占用者にとって文字通り法は無いに等しい。
 カイツブリ、カワウ1、オオバン5、カルガモ、コガモ、。キジ、キジバト、セグロセキレイ、ヒヨドリ、モズ、ツグミ、ウグイス、ホオジロ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス。

3月24日 羽村草花地先の多摩川右岸 曇り
 カワラノギクプロジェクト。自生地の管理と復元。自生地とは言うが、自生の株はわずかになり、かつて大群落があったところにオニウシノケグサやシナダレスズメガヤ、ススキなどが繁ってきたため、数年前から自生の植物に影響を与えない場所と方法で少しずつ手を加えてきた。今回は、昨年造成した復元地を拡張し、クズその他を抜根し、またいろいろな条件の下での発芽実験用地を造ったりした。オニウシノケグサが繁茂している所には砂が多く溜まっているのが特徴だ。
 作業に入る前に、河川生態学術研究会多摩川グループの星野先生から、この付近で計画されているドライクリークについて説明を受けた。一言で要約すれば、治水のためのドライクリークは不要であること、カワラノギク自生地を自然的に拡大しうるような計画を考案中ということだった。左岸側深掘れ防止のための礫投入が行われているが、橋の上から見るとやはり異様な光景である。
 帰路、近くの雑木林でニリンソウカタクリが咲き始めているのを見学した。
 永田橋の架け替え工事がどんどん進み、水路変更も施された。人がいなければこういう所を通る魚をねらってサギなどが集まるだろう。
 カワウ、イカルチドリ、キジバト、アオゲラ、コゲラ、イワツバメ、ヒヨドリ、モズ、ツグミ、ウグイス、シジュウカラ、エナガ、ホオジロ、スズメ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

3月18日 宿河原堰から上河原堰までの多摩川左岸 快晴、寒い
 定例自然観察会。
 和泉多摩川駅から東南にのびる車道を進むと、T字路にあるマンション入り口に、旧六郷用水にかかる河原橋の親柱が2本残っているが、数年前にそのうち右側の柱が折れて倒れた。そこにフェンスが張られていまやいっそう悲惨な状況になっている。
 河原に出ると、ヤナギの新芽が美しく、遠くに純白の富士山が望まれる。水面にはヒドリガモが100羽近く浮かんでいる。対岸では消防団の放水訓練が行われていた。最近半鐘や鉄板が盗まれているが、撤去か盗難か不明ながら鉄板を剥がした後にオギのモヤシができていた。
 堤防のり面のヒメウズ群落は無事でたくさん花を咲かせていた。複線工事中の小田急線を越え上流に向かうと、オオバンが5羽いるワンドに釣り人が数十人。多摩水道橋を過ぎると、ワンドや池が点在し、コサギカメが住み、オギ原には緑鮮やかなアオジが2羽餌を啄んでいた。さらに上流へ向かうとHL群落。大量の廃棄物を焼却した跡がひどい。
 狛江五本松で昼食。護岸工事で流れが変わり、多摩川の景観が悪化した。六郷用水取り入れ口跡や玉翠園船着場跡の石垣、水神社などを見学。
 午後は、2007年度の総会を近くの公民館で開催、「多摩川源流」のビデオを見たり、上野会員の河口干潟の写真や篠会員収集の高温石英を見たりした後、上河原堰改築工事を視察した。工事で出た土砂が高水敷に大量に積まれている。工事は図面では大したことがないように見えるが、実際は4階建てビル相当の大規模なもの。最後に、堰上流に拡がる中州が冬には意外と小さく見えるのを発見した。
 カイツブリ、カワウ、コサギ、オオバン、ヒドリガモ多、オナガガモ、コガモ、キンクロハジロ、セグロカモメ。キジバト、ヒバリ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、ツグミ、シジュウカラ、メジロ、アオジ、カワラヒワ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス。

3月10日(土) 羽村大橋から五日市線鉄橋までの多摩川左岸 晴のち曇り、冷風
 羽村堰第三床止から下流300メートルほど礫河原再生のための土砂が川の真ん中に投入されている。そのさらに下流300メートルでは、都水道局ポンプ場護岸補修工事が行われ、木組みの水制が数基造られている。
 永田橋では架け替えのための仮設橋の建設が始まっている。ケヤキの大木が工事現場にあり、工事後まで生き延びられるか不安だ。
 永田地区の礫河原再生事業での土砂が多摩橋辺りまで流れてきている。
 福生市中央公園では、水辺の楽校のための散策路建設中。午後の会議で、福生水辺の楽校の活動はすでに数年経つが正式開校はまだで、開校するために施設を造っているという説明があった。いまある自然を利用するだけでは水辺の楽校に登録されないのだとしたら、その制度自体がおかしいと思うが、京浜河川事務所長の弁明ではそれは誤解であり、登録にあたってそのような条件はつけていないとか。
 イヌコリヤナギ開花しカワヤナギも新緑。ニワトコの葉芽もだいぶ伸びた。堤防のり面に生えるケヤキの大木は1970年代からある。
 カワウ、ダイサギ、カワセミ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、ツグミ、ウグイス、シジュウカラ、カワラヒワ、スズメ、ハシブトガラス、ガビチョウ。
 午後は、河川生態学術研究会多摩川グループの市民合同発表会が開かれて参加した。礫河原再生事業の説明それによる魚類への影響の2本と、河床上昇による河川敷内公園の浸水被害について、そして福生水辺の楽校の活動報告の2本、最後に永田地区のドライクリーク計画についての簡単な説明があった。参加者との質疑では、漁業関係者から小さめの土砂供給によりアユが棲める環境が減り、また淵が減って魚の成育に影響があるとの意見が出たほか、魚道の性能、固定堰と回転堰についてなど、活発な意見交換があった。

3月4日(日) 登戸周辺の多摩川 快晴、4月の陽気
 ヤッケを脱ぐ暖かさ。花粉が飛び交い外出もままならないが、久しぶりに川へ。
 登戸駅地先の多摩川人工池には釣り人のほか、網を持った親子連れが数組、石投げする子ども、堤防でくつろぐ若いカップル、草地で会食する婦人グループなどで賑わう。タコノアシも健在。川面にはカイツブリやカワウ、コサギ、ユリカモメなどが見られ、川辺のヤナギも何となく芽吹き色。小田急線複々線化工事も大詰め。上流の茶店前ではビールで宴会するサイクリング仲間などで賑わう。川の風物であるボート屋も営業中。
 多摩水道橋を渡る。広大なグラウンドが空いている。右岸の〈五本松〉は元気だ。砂州が拡がっている。左岸は自然にできたワンドが点在し、水を湛えていた。

2月18日 産業道路から多摩川河口右岸 風雨強く、酷寒
 定例自然観察会。今回は、羽田空港神奈川口構想による多摩川干潟破壊が懸念されるため、NACS-J自然観察指導員東京連絡会と共催で実施したが、耳がちぎれそうな横殴りの冷たい強風雨に曝され、つらい会となった。
 それでも根性ある(?)物好き(?)10名が集まり、大師橋から多摩川河口まで、夏羽のカンムリカイツブリ、カワウ、マガモ、カルガモ、ヒドリガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモ、ハマシギ、ユリカモメ、ウミネコ、セグロカモメ、オオセグロカモメ。トビ、キジバト、ハクセキレイ、ヒヨドリ、ツグミ、アオジ、カワラヒワ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラスを左に見、右にスーパー堤防工事が進む都市再生機構所有地(いすゞ自動車工場跡地半分)とトヨタなどの新品自動車1000台以上が駐車しているヨドバシカメラ所有地、同じくヨドバシカメラ所有地で高さ5メートルの金属塀で囲まれた広大な土地を見つつ、多摩運河まで往復した。京葉線貨物線トンネルの排水が大量に噴き出しているのは雨量のせいか。
 都市再生機構所有地の利用計画が未定のためという理由で環境アセスメントも行われずに着々と整地だけは進んでいる。ここに羽田空港からの橋脚が架かるのではという話も流れてきており、万一そうなったら多摩川河口干潟とトビハゼやアサクサノリほかカニや野鳥に甚大な影響を及ぼすと思われる。多摩川の河川環境を維持する使命を帯びた国土交通省関東地方整備局京浜河川事務所にもフルに頑張っていただきたい。
 大師橋右岸のすぐ下流は現在野球場がつくられているが、むかしはこのすぐ近くまでウラギクの群落があり、この土地を整地して資材置き場にする際には反対した記憶がある。当時もっと真剣に阻止しておけば良かったと悔やまれる。

2月10日 府中四谷橋左岸上下流と、南武線鉄橋上流右岸 晴れ、比較的暑い
 昨秋実施した多摩川外来植生調査の報告会が府中市郷土の森で開かれた。
 午前中は、府中四谷橋左岸下流から上流にかけてアレチウリが猛威をふるった河川敷を視察した。一昨年まで25000羽を越えるツバメの集団ねぐらがあったアシ原もほぼ全滅。上流も、一昨年工事資材置き場にした箇所以外はアレチウリが覆っている。南武線鉄橋右岸上流のオギ原もいまや一面蔓植物に覆われているが、ここはクズとカナムグラ。埼玉大学の佐々木教授によると、アレチウリは一年草で毎年タネから発芽するが、クズやカナムグラは多年草で、地下茎が太く奥まで伸びており、除去するとしたらこちらの方が大敵だとか。
 午後は会議室で、昨年行ったアレチウリ・オオブタクサ・キクイモの分布調査結果の報告とその解説および討論が行われた。狛江の水辺の楽校ではすでに5年ほどアレチウリ駆除をしているが、やらないよりましだとしても効果は薄いとか。かといって遺伝子操作等は他の生物への影響が懸念されなすべきではなく、せっせと駆除して汗を流しビールを美味しく飲むのが当面最も効果的(?)という妙な結論も出た。いずれにせよ、この調査は今後も継続して行うことが確認された。なお、アレチウリ等は特定外来植物に指定されているので、勝手に除去してその辺に放置すると法律によって罰せられるとか。
 研究者の話にはなるほどと思うことも多々あったが、「話をわかりやすくするため」として特定植物を「敵」と表現することに抵抗を覚えたほか、参加者がアシ原でアレチウリ除去をしていると報告したのに対して、「それはアシではなくオギです」などと自分の思い込みを主張する点も気になった。
 大丸用水堰の左岸寄りの魚道は今日も水が通っていなかった。中央の回転堰を開けているせいかもしれないが、何のために?
 府中四谷橋上流右岸は、ここ3年連続の護岸工事で、アレチウリはないが、自然もまったくなくなった
 カイツブリ、カワウ、コサギ、オオバン、マガモ、カルガモ、コガモ、イカルチドリ。トビ、オオタカ、キジバト、ハクセキレイ、セグロセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、ツグミ、シジュウカラ、カワラヒワ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス、ガビチョウ。

1月28日 第1回多摩川流域市民学会 福生市民会館
 多摩川流域ネットワーク主催で、実行委員会形式で開催された。多摩川市民フォーラム以来の念願だったと実行委員会代表の長谷川博之さん。市民活動をまとめ、市民環境科学の確立を目指す小倉紀雄先生の講演は、市民による活動を学会として報告する今日の集会に相応しい内容だった。ただ、ほかの発表者の多くも最近流行のパワーポイントを使うため、その場ではわかりやすいが受け身なので頭に残らず、帰宅して復習したくても画面で見た文書がレジュメに載っていないので確認できない。
 長島保さんの実証的な地域史研究、遠藤保男さんの玉川浄水場再開を目指す実証科学的かつ夢のある話、榎本正邦さんの子どもとの川遊び報告、分科会では若手研究者の報告も含めたさまざまな調査研究報告などがなされた。本会の柴田隆行は「貴重」の尺度を変えて生活者の目でしつこくしぶとく観察し続ける継続性と、誰もが自分の体験を語りうる研究の一般性を柱にした活動報告をした。4つの分科会から選んで参加した部会が内容盛りだくさんだった分、質疑の時間がとれず、全体会も含めて参加者との交流がほとんどなかったのが残念だった。たとえば倉本宣さんはカワラノギクの保全活動がばらばらになされて野生と人工の区別がつかなくなっている問題を提起し「みなさんのご意見をうかがいたい」ので参加したと言っているのに、司会がそれを受けずに流してしまうのでは何のための学会かわからない。
 そういったいくつか反省点が見られたが、第2回以降も続けたいとは思った。河口干潟の危機的状況について話題に取り上げたかったが、上野さんの写真を展示し資料を配付するだけに終わった。
 帰宅してもいまだに耳に残っているのは、昼休みに開かれたコカリナ演奏に合わせて歌った矢口周美さんの歌声だった。

1月21日 多摩川大橋から大師橋の多摩川左岸 晴れのち曇り 寒い
 定例自然観察会。今回は多摩川大橋から六郷橋まで左岸を歩き、六郷橋を渡って右岸に行くべき所、右岸は比較的最近歩いたので、アシ原と干潟の現状を確認すべく、橋を往復してふたたび左岸を歩き、最後に新しい大師橋を渡って右岸に出た。
 最初は護岸工事が繰り返され、狭い河川敷に車椅子用道路、緊急避難時用道路、岸辺散策路が並行して造られたつまらない河原を歩く。カンムリカイツブリがときどき水面に顔を出すのが唯一の慰め。水際に並んだ蛇篭は網のようで弱い。水際に土盛りがある辺りからHLホームが続き、河川敷は野球場や運動場、釣り堀、ゴルフ場、駐車場と、野鳥などが休む場所もない。暖かい場所らしく、アキノノゲシやセイヨウカラシナの花が咲き、ヤナギの葉もまだ青かった。対岸は、川崎市のビル群とスーパー堤防など人工施設が林立する。
 東海道線等の鉄橋と京浜急行線の鉄橋をくぐった辺りでようやくアシ原に入る。ここも古くからHLホームの団地が続き、ウラギクも絶滅寸前。代わりにバナナが見られる。たくさんの生物が生き残っていた溝も汚れた感じで、カニ以外は何もいなさそう。六郷橋から見下ろすとゲートボール場、テニスコート、HLホームの先に広大なアシ原が広がっているのが見えるが、このアシ原の半分は少し前まで干潟だった。あっと言う間にアシが茂ってしまった。かつて尾瀬のように湿地と干潟の中を木道が走っていたが、いま木道が1箇所かろうじて残されているだけで、全体に乾燥した感じがする。トビハゼがいる辺りもアシやヒメガマ、ウキヤガラなどが密生している。水面が広がる辺りでようやくセイタカシギやバン、オオバンなどの姿が見られるようになる。もっとも、その手前で餌付けされたオナガガモやユリカモメの大群を目にすることになる。六郷水門を過ぎて、ふたたびグランドやHLホームなどを見て多摩川最後の橋、大師橋に到着。橋の上から多摩川を見渡す。右岸の橋のたもとに昔の橋の柱が残された公園があった。
 今回は、下流・河口で多摩川の写真を撮り続けている上野隆史さんが参加され、周辺の歴史と最近の状況について詳しく案内して下さった。地元の古屋さんもウラギクその他の現況について縷々説明して下さり、内容が充実した一日だった。感謝。
 カンムリカイツブリ、カワウ、ゴイサギ、コサギ、アオサギ、バン、オオバン、マガモ、カルガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、ハマシギ、イソシギ、セイタカシギ、ソリハシシギ、ユリカモメ、セグロカモメ、オオセグロカモメ。トビ、チュウヒ、オオタカ、キジバト、ハクセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、ツグミ、セッカ、メジロ、カワラヒワ、スズメ、ムクドリ、ハシブトガラス。

1月15日 河辺地先の多摩川左岸 快晴
 地元自治会が、子どもが川遊びに行くのに危険だから河川敷の木を切って欲しいと要望していることに対して、国会議員が仲介したこともあっ、議員当人のほか、京浜河川事務所長、管理課長、河川環境課長、各課職員、青梅市職員など総勢20名以上の現地協議となった。上流出張所長だけで済む話だと思うけど……。
 住宅周辺の樹木とヤブを切って欲しい、落ち葉が樋に詰まるから大きな木の枝を払って欲しいという意見も出たが、管理課長がそれではきりがないのでどうしてもすぐにという要望に絞って欲しいということで、市民が一般に河原に出る小道周辺を整備することで話し合いがついた。ニセアカシアが小道を覆って夏にはかなり鬱蒼として暗くなるのは事実なので、多少の伐木は仕方がないと思う。崖の住宅沿いの木を切ったら、自然保護よりも治水上危険だと思われる。
 河原の藪を払って整備して欲しいという意見も出たが、この場所では刈っても2か月もしないうちにふたたび草が覆って無駄だと思う。
 なお、多少の整備をするにしても、周辺に稀少植物が生えているので〔保護上具体的なことは書けない〕十分気をつけるように出張所長等にお願いした。

1月7日 多摩川右岸永田地区 快晴、風が強いが暖かい

 カワラノギク・プロジェクトとして、種子の採取をおこなった。暮れの嵐と今日未明の強風で自然撒布されたものも多いと思われるが、見た目にはまだたくさん種子がついている。紙袋を拡げて種子のついた房を振るが、強風に耐えた種子だけあって、湿っていたり未熟であったりしていることもあり、あまり落ちない。軽くつまんですぐに採れるものだけ採った。
 チョウゲンボウ、ホオジロ、ベニマシコ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、スズメなどの姿が見られた。
 永田橋(いよいよ架け替え工事が始まる)の近くの右岸でここ数年どんど焼きが行われており、その準備が整っていた。ちなみに、ここのどんど焼きは周囲のオギを刈り取ってつくられていることがわかる。
 作業後、福生駅近くの喫茶店で今年の作業について話し合いをした。
 「カワラノギクを守ることにどういう意義があるか」という参加者の質問に対し、「一言でいえば自分が幸せになれる」という声が出たほか、カワラノギクを象徴とする河川独自の生態系を保護することになるとか生物多様性の維持に貢献する(カワラノギクだけ見ても、種子の色が白やクリーム色や赤っぽいのなどがあり、種子がすでに散っているものや成熟が遅れているものもある等々)などの声もあった。先の問いに対して、「自分が生きていることにどういう意義があるか」と自問すれば答えはすぐに出るのではないかと思われる。みずからに存在意義がないとすればカワラノギクの保護も意味がない。みずからになんらかの存在意義があるとしたら、それは代理不可能性にある。自分がどんなにちっぽけでつまらない人間であったとしても、それは他に代えられない。科学技術が進歩し宇宙にロケットを飛ばせても、滑走なしに瞬時に飛び立つ蠅一匹つくれない。蠅や蚊をたとえ嫌っても、蠅や蚊を絶滅させたいと思う人は自分自身の存在意義を語れないであろう。永田実験区から河原に広がったカワラノギクが、増水で根元を洗われながら必死に生き延びている姿や、いまごろしぶとく花を咲かせている株を見ると、生きる勇気が与えられる。
 ところで、作業人数の増大が望めない現状において市民が最低限できること・しなければならないこととして、まず、このプロジェクトを立ち上げた際の確認事項、すなわちいったん人工的な管理をし始めた以上中途でやめるわけにはいかないことを再確認したあと、A工区について2年間作業漏れとなっているB工区境界周辺から除草を始めること、五月の新芽の頃に一度除草をすること、自生地についても一定の管理をすることを決めた。また、土壌の富栄養化防止のためヒメムカシヨモギなど抜けるものは極力根から抜き取ること、カワラヨモギの枯茎も抜き取ることを決めた。

1月6日 多摩川河口右岸 氷雨強風

 スーパー堤防工事に伴う樹木伐採についての現地協議をおこなった。
 殿町第二公園から河口運河にかけての右岸堤内地はかつていすゞ自動車工場が続いていたが、工場撤去後、下流半分がヨドバシカメラ、上流半分がUR都市機構の管理地となって現在更地である。今回、UR都市機構用地幅600mをスーパー堤防にする工事が始まっており、第一期2年間にその半分の300m、第二期2年間に残り300mに盛土をする予定。堤内地は地主の問題なので何とも言えないが、堤内地と堤防との間に植えられている樹木がなくなると生態系保持空間に指定されている多摩川の自然環境にも少なからぬ影響が及ぶと懸念される。そこでまずは樹木伐採に待ったをかけて、本日その協議会が現地で行われ、京浜河川事務所沿川再開発課と河川環境課、田園調布出張所の担当官、川崎市環境局緑政部参事、本会会員、日本野鳥の会神奈川支部、日本自然保護協会自然観察員連絡会会員が参加した。
 現地視察後、近くの集会場で、まず工事概要説明後、境界の樹木について意見交換をした。
 京浜工事事務所(現河川事務所)と多摩川水系自然保護団体協議会および本会とは30年近いパートナーシップのもとで河川工事に関する事前情報提供・意見交換をしてきたが、今回は樹木調査結果のみ知らされ、そのもとになっているスーパー堤防工事についていっさい情報を提供されていない点について不満を述べたところ、沿川再開発課長曰く、スーパー堤防は河川区域外の堤内地の問題だから資料提供しない、と。行政区分はともかくとして、自然環境からすれば工事概要ぐらい示してくれても良いと思うが、「それでは極端な話、堤防から数十メートル離れたところについても計画を示すべきかという話になる」などと勝手に話を極端化して開き直る態度は、京浜河川事務所に関してこれまで持っていた信頼感を大いに損ねるものと思われた。こういう発想が生まれるということは、この課長に河川環境という概念がまったく欠けていることを示している。というのも、環境は、たとえばドイツ語で言えばUmweltと言い「周辺世界」を意味するが、それは一つの世界が周辺の世界との関係ぬきにはあり得ないという意味であって、河川環境も堤防の外側すなわち川側だけでなくその周辺も含めて初めてその効果を維持しうることを意味するからである。堤防の内側は河川区域ではないから河川環境に関わる市民団体に資料を提供する必要はないという発想は、「河川環境」本来の意味からすれば、あり得ないはずである。また、こういう発想は、1980年2月に建設省京浜工事事務所により策定された『多摩川河川環境管理計画』に盛られた精神を否定するものである。そこではつぎのように明記されている。
 「沿川堤内地のある巾の地域を、河川環境を補完する機能をもつ『河川回廊』として設定し、水と緑を基調とした総合的な一貫性のある空間の帯を形成していくことが望ましい。」
 なお、当該地区の樹木について意見調整している間(昨年暮れ)に、現地ではすでに工事が進められており、河川環境課長および地域連携係長が、所内連絡不十分について陳謝するメールを送ってきた経緯があることも付言しておく。
 沿川再開発課の対応に比べて、川崎市職員の話は具体的で、状況を理解する上で大いに役立ち、説得力があった。川崎市によると、いすゞ自動車に対して当初の計画に基づいておもに大気汚染対策として工場に対して緑化指導をした際に、第二公園から600mは堤防の幅が広く余剰地があったために市が国から占用許可を得ていすゞ自動車に樹木を植えさせ、そこから下流側は余剰地がないためフェンスぎりぎりないしは工場敷地内に樹木を植えさせた。工場撤去後、いすゞ自動車は樹木を放置して行ったが、最下流部は敷地内にあるために樹木がきれいに残っているが、途中欠けたり痛んでいるのはフェンスを撤去する際に切られたり倒れたりしたためで、上流側は風や樹木老齢化等で倒れたものが多いがいまのところそれなりに残っている。UR都市機構用地の利用計画が立っていないため市としてどのような緑化指導をするか決めかねているが、地元市民の要望や時代的ニーズからして「川から見た緑化」という視点も含めて複合的な緑化計画を立てたい、と。
 結局はスーパー堤防を建設する過程でいまある樹木を撤去するが、現存の老齢化しているトウネズミモチやサクラ等を高い費用をかけて移植するのが良いか、環境に合った樹木を新たに植樹するか等について今後、自然保護団体も含めて、市民と話し合って行くということになった。
 河川行政その他において自然保護という観点、すなわち工事で邪魔なものは除去して後から必要なら木を植えればよいという理解ではなくかけがえのない生物を全体として捉える視点を失わないで欲しいし、そういう観点があれば今回のような工場撤去後の現状ももっと違ったものになったのではないかという市民の意見があった。
 なお、国ならびに市の説明では、羽田空港から右岸へのアクセス計画(橋梁かトンネルか)については事業主体が決まっていないのでまだ白紙で何とも言えない、と。これに対しては、京浜河川事務所としては生態系保持空間の重要性等をしかるべき折に強く主張して欲しいとの市民からの声があり、河川環境課長としてはそのつもりでいるとの回答があった。(追記。帰宅してパワーポイントで示された説明図――デジカメで撮った不鮮明な画像――を見ると、「神奈川口整備にむけてのスーパー堤防」と書かれている。橋梁かトンネルかは不明だが、UR都市機構用地が羽田空港の神奈川口となることは確実である。その点は地元新聞等では公開されているらしい。)
 その他、スーパー堤防により安全が確保されるとしても、資産のある所から手を付けるという方法は、改修が遅れる他の地域の安全を脅かすことにならないかという疑問に対して、国としてはスーパー堤防の方が安全性は高いが、従来の堤防も計画洪水流量に見合った安全性を確保するために護岸工事をしており、スーパー堤防周辺の未改修地区が危険になることはないと考えている、との回答があった。なお、スーパー堤防の必要性を説くパワーポイントで多摩川における大水害の例として狛江水害と戸手地区の床上浸水が挙げられていたが、これはかなり詐欺的例示である。というのも、狛江水害は最高裁判所判決で確定しているように強固な取水堰が流下阻害を起こしたための堤防破壊であり、戸手地区の親水は河川敷内に建っている住宅の被害であり、ともにスーパー堤防の存否とは無縁と思われるからである。
【参考】
(1)この件について、最初に2006年11月15日付で京浜河川事務所より情報が寄せられた。
●H18殿町第一地区高規格堤防工事
 1.目的
 @大洪水で堤防を越流しても水が穏やかに流れ、決壊しない強固な堤防を作ります。
 A川裏側の堤防部分が平らになることで、土地の有効利用が計れ、多摩川を活かした快適で美しい街づくりができます。
 2.工事範囲(別紙平面図通り)
 川崎市川崎区殿町3丁目地先
 3.工事内容
 @高規格堤防盛土  72,300m3
 A立入り防止柵    300m
 B仮設工        1式
 4.工事期間
 工  期 :平成18年10月19日〜平成19年3月27日
 作業期間:平成18年11月20日〜平成19年2月23日
 5.工事施工担当
 発注者:国土交通省 京浜河川事務所
 監督者:国土交通省 田園調布出張所羽澤、宮本 TEL:03-3721-4288
 請負者:五栄土木株式会社  現場代理人 渡辺  TEL:044-166-3776
 6.環境配慮事項
 @川裏側の樹木について
 川裏側の樹木については、下記の理由により撤去・処分致します。
 ・川崎市・地区長に確認したところ、処分してもよいとの回答を得ているため。
 ・樹木の再設置をする場所及び引き取りてがないため。
 A工事完了後の自然再生に考慮します。
(2)これに対して11月17日に会として下記のような意見を述べた。
 この件につき、目的があまりに一般的・形式的であり、現状に即していないと思われるため、反対します。
 1、多摩川河口を目前にし、大洪水のときでも水は東京湾に流れ込み、しかも現状の堤防自体がすでに高規格堤防のような形になっており、堤防を越流するとはこの地域では考えられない点。
 2、川裏側が平らになり、堤内地と一体になり「土地が有効利用」されると、多摩川の自然と堤内地の人工圧との緩衝が得にくくなるとも考えられ、高規格堤防が「快適で美しい街づくり」につねに貢献するとは思えない点。
 3、現在川裏側に立ち並ぶ樹木は、堤内地との境をなしており、堤内地の工場生産(かつて)や跡地の整地工事(最近まで)などの騒音等から多摩川の自然環境を守ってくれていた大切な樹木である点。
 4、生えている樹木はトウネズミモチやケヤキ、ムクノキなど、多摩川固有ないし河口部固有とは言えないが、工場地帯にあって野鳥たちの格好の餌場ならびに隠れ場になっており、周辺環境を考慮すれば、きわめて貴重な樹木である点。
 5、川崎市・地区長が処分しても良いと言ったとしても、この樹林は住宅地から離れており、この人たちがふだんどの程度この地に足を運び、どの程度この樹林の価値を実状に即して理解しているか、失礼ながら、疑問である点。
 6、当該地区での堤防改築は、トビハゼや数多くの種類のカニ類などが棲息し、また野鳥の餌場でもある、周辺のきわめて貴重な干潟に甚大な影響を及ぼすため、拙速な工事実施は厳に慎むべきであり、環境影響調査等を実施し、かつ改築の必然性を科学的に明らかにしたうえで計画すべきである点。(上記「目的」はどう見ても一般論的過ぎて、堤内地の再開発に便乗しようという意図が丸見えである。)
(3)これに対して、地域連携係長より12月1日、事業について説明したいので柴田の職場にうかがうとの連絡があったが、柴田は会の代表であって個人的に説明されても困るという返事を書いたところ、12月4日に、同係長より「堤防沿いの並木伐採反対は、柴田様と日本野鳥の会神奈川支部の方だけでしょうか」というふざけた内容の問い合わせがあったので、市民運動を冒涜するものとして抗議した。
(4)同時に、12月8日付の会員上野隆史さんの以下の意見を京浜河川事務所に転送した。
 東京界隈に於ける堤防増強の動きは、今尚止まることを知らない東京圏の経済膨張と揆を一にするもので、一極集中を良しとするマジョリティーがある限り、河川事務所を糾弾してどうこういう性質の問題でないことは承知しています。たゞ時代の転機と言われる現代では、形成された資産が負債に転じるおそれもあり、我々の代がその建設を進めるに至った経緯を正確に認識し、その認識を後世に伝えていく責任があると思います。
 その意味で、殿町3丁目のスーパー堤防について(可能な限り着工される前に)、京浜河川事務所に確認しておきたいことが二点あります。
 1)右岸の河口から3キロメートル余りのうち、大師橋袂から河口側の800メートル余りの間は今後どのようにする予定になっているのでしょうか。
 河口近傍の沿岸部は、左岸は古くから高潮対策用の防潮堤を作っていますが、右岸は高水護岸で十分とされてきました。近年、新日鉄やいすゞ自動車などの大企業が相次いで撤収し、川裏が大規模に再開発されるようになったことで、当該地区にスーパー堤防建設の動きが進んでいます。こうした中、大師橋袂から河口側の800メートル余りの区域は、川裏に民家、小規模工場、小規模マンション、社寺などが密集し、周辺とは異なる地区になっています。この区域に隣接する上手側では、既にUR都市機構保有地を主要部とする区域に、スーパー堤防が完成間近であり、一方隣接する下手側のUR都市機構保有地を主要部とする区域(河口側1.6KM)に今後スーパー堤防が作られることになれば、中間にあるこの800メートル余りが言わば「堤防の穴」として取残されることは目に見えています。この800メートル余りの区間に対する計画(或いは構想でもよい)が無いまま、下手側で部分着工することはフェアなやり方ではありません。
 堤防は河川事務所が強調するように「強化された所の人は安心」かもしれませんが、その一方「強化されなかった所の人は一層不安」にさせられるものです。そうした住民心理を見透かしたように「計画未定地区」を残し、周囲で見切り発車し、結局住民自らの要望という形で自然環境に代償を払わせるという筋書きは、非民主的な手法であるばかりでなく、経済至上主義に捉われ環境保全の重要性を一顧だにしない時代遅れな発想です。
 殿町3丁目に着工する前に、その上手の800メートル余(殿町1、2丁目)についてどうする予定であるのかを合わせた計画を、地元住民や環境等関係各方面に提示し、全体計画についてコンセンサスを得て行うのが、民主的で将来に禍根を残さない正直なやり方と思います。
 2)近年「空港の神奈川口」構想が持ちあがり、殿町地域一帯にはその主要施設の建設が行われると噂されています。この再開発については、地元の川崎市をメンバーに含む「神奈川口協議会」が組織され、塩浜周辺全域の再開発についてマスタープランを審議中であると聞いています。この協議会の判断(必ずや環境アセスを含むはず)が出ないうちに、何故河川事務所は独走してまでスーパー堤防工事を急ぐのでしょうか。UR都市機構と取引するような形で、ただ手続上問題は無いとしているのか、或いは何らかの形で神奈川口協議会または川崎市(川崎区)の事前合意を得て行おうとしているのか、着工に先立ってこの点についても経過を明らかにしてもらいたいと思います。
(5)これらまでの経緯ならびに今日の協議の様子を合わせて推測するに、この地域全体の開発計画を本会や市民団体に公開することに対して、なんらかの圧力がかかっているのではないかと思われる。

1月1日 曇り
 新年は北ドイツのキールで迎えた。
 大晦日の夜は、17時半頃から市内各地で市販の花火が打ち上げられ始め、23時59分まで絶え間なく花火の音が聞こえた。そして、越年の時報とともにあちこちから歓声が上がり、キール湾の両岸から一斉に競うように花火が打ち上げられた。いずれも市販の花火なので花火自体はさほど大きなものではないが、とにかく海辺に建つゲストハウスの5階の窓から見渡す限り数十箇所あっちこっちから次々と数千発の花火が30分以上も打ち上げられる光景は見事だった。
 9年前にここに一年住んだとき以来だが、前回はこれほどではなかったような気がする。
 新聞によると、キール市条例で、花火を発売するのは12月29日から31日の3日間、子ども向け以外の花火は18歳以上でないと発売禁止、そして打上は12月30日から1月1日までの18時から1時までと決められているらしい。
 あちこちで花火の音がするので、22時頃散歩に出て、花火を打ち上げていると思われる市庁舎周辺の大きな池に行ったら誰もいず、教会前の広場に若者たちが大勢たむろして花火を上げ、0時になるのを待っていた。花火は水辺でという私たちの常識はドイツでは存在しなかった。(池にいるカモや白鳥たちへの影響を心配したが、その点は良かった。)

2006年のニュース